2013年3月26日火曜日

【清水和夫メールマガジン】第29号 アーカイブス 2012.2.25

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2012年2月25日 第29号
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速度を守るのは誰か?

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 「日本ではなぜ大型トラックだけが90km/hリミッターが規制されたのか。そして同じ大型でもバスは規制されず、さらに乗用車はなぜ180km/hリミッターなのか。また日本の法定最高速度は100km/hなのだから、そこまでの安全性を確保すれば充分ではないのか」。たまに自動車の初心者から、ギョっとする質問を投げかけられることがあります。自動車専門誌を中心に仕事してきた私は、このような一見クルマを知らない素人の疑問に対して、あまりにも初歩的過ぎて無視してきたかもしれません。

 しかし、改めて考えてみると、このような疑問や矛盾は日本のクルマ社会が抱える本質的な問題であり、自動車を専門とする私達はもっと真剣に考えておくべきであったと考えるようになりました。こうした質問は普通の人の感覚ですが、改めて読み直すと、自動車の専門家でも答えにくい指摘であると気づきます。日本の自動車雑誌の若い読者の中にも、こうした疑問を持っている人が少なくありません。さて、この問題を解く糸口とはなんでしょうか? 結論は「クルマとは何か」について、確認しあう必要があると考えます。

 自動車の速度に関しては、過去にこんなことがありました。まだ、自民党政権の時代に衆議院の後藤田正晴議員が、国土交通省の自動車課に対して、「乗用車の制限速度が100km/hなのに、リミッターが180km/hなのはおかしい」と迫ったことがありました。これにはさすがのお役人も即答できずに、困ってしまったそうです。私の持論は単純で「ルールを守るのは人間であって、決して機械ではない」ということです。

 リミッターで規制するということは、つまり「ドライバーは法律で決められた速度を守る」という、もっとも基本的で重要な安全運転の第一歩を、機械に任せることになってしまうからです。人間と機械の関係を置き換えてしまうと、いずれ大変なことが起きるでしょう。ルールを守るのは誰かともう一度考える必要があるのです。しかも、現実の社会には様々なスピードが存在しますから、最高速度だけをリミッターで規制すると、ドライバーは遵法精神を機械に任せるようになってしまいます。

 むしろ高速道路よりも生活道路のスピード遵法が重要かもしれません。もし、ドライバーに高速道路だけでなく、街中のスピードも守らせたいなら、リミッターなどという原始的な施策ではなく、メルセデス・ベンツが導入しているスピードリミットアシストが有効です。このシステムはクルマのフロントウィンドウに取り付けられたステレオカメラで、道路の速度表示板を読み取り、メーターに表示する単純な仕組みです。うっかりしてスピードを出し過ぎていたことはよくあることですが、そんな人間のミスを防ぎ、何km/hで走るべきなのかというスピード遵法を思い出させる効果があります。実際にヨーロッパで使うと、とくに夜はとても便利ですし、安全運転を喚起させる効果は絶大でした。

 いずれにせよ「クルマとは何か?」について、もう一度しっかりと議論しておかないといけません。幾度となく社会問題となった交通事故対策は、手っ取り早く速度を悪者にしさえすればことがすんできました。クルマが増え、交通事故が増え、大気汚染が問題となり、燃費消費が増し、自動車の負の遺産は経済成長と共に増加しました。

 自動車をたくさん作って売りたいと願う一方で、「速さは諸悪の根源」と決めつけるのはあまりも矛盾しています。ITS先進国の日本では、カーナビを使って制限速度を表示させることは難しくありません。要はそういう発想があるかどうかです。手段は色々と考えられますが、速度を守らないから、リミッターで規制するというのは幼稚な手法です。どうしてもルールを守らせたいなら、喚起、警報、規制と三段階で実施するべきかもしれません。

 健全なモビリティ社会は、どんな国でも誰もが求めて止みません。“自由に、いつでも、どこでも、快適に、安心して、経済的に移動できるモビリティ”は特に日本のような高齢化社会のトップランナーには必要なのです。予測では20年後に75歳以上の後期高齢者が2000万人を超えると言われています。ますます“個人の移動”が重要となることは明白です。都市部の公共交通こそ、就業人数が減少すると破綻する路線もでてくるでしょう。

 日本の未来は、多くの技術革新が実現し、新しい法律や制度のもとで、豊かなモビリティ社会が待っていると思うのは早計です。もし、日本人がそうしたいなら、今はしっかりと「クルマとは何か?」について根源的に考える必要があります。鉄道や航空機、コンピューターのCPUの速度はどんどん高まるのに車の速度に関しては、まるで性悪説のように悪と決めつけてしまうのでしょうか? この誤解を解かなければ、いつまで経っても、日本に真のモータリゼーションは訪れないでしょう。

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【DST#034】キャデラックCTSクーペ vs フォード・マスタングGT(加減速篇) / CADILLAC CTS Coupe / FORD Mustang GT(4分23秒)
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スバル初のFRスポーツ BRZ試乗記 AT編 / SUBARU BRZ R (5分14秒)
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2013年3月11日月曜日

【清水和夫メールマガジン】第28号 アーカイブス 2012.2.10

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2012年2月10日 第28号
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オートサロンでもっとも注目を集めたFR

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 カスタムカーの祭典、東京オートサロンで今年もっとも注目を集めたブースはスバルだったことはいうまでもありません。トヨタと共同で開発した2リッターFRスポーツカー、BRZをベースとしたチューニングカーを一目見ようと来場者が殺到しました。

 スバルのワークスチューナーとも呼べるSTIと、スバルのチューニング歴32年を誇るプローバ。それら二社が作った二台のBRZコンセプトモデルはいずれもレベルの高いものでした。STIが用意したBRZはインプレッサのチューンドモデル、S206と同様にルーフの素材にカーボンを用いるなど素性の良さを活かした軽量モデルです。

 一方のプローバが仕立てたコンセプトカーはブラックシリーズと呼ばれ、センターマフラーや細部まで品質にこだわった知的な悪を演じています。プローバのブラックエディションは、大人が乗れるかっこいいスポーツクーペというコンセプトですが、ショー会場では老いも若きも、さらには女性までそのスタイリングに釘付けとなっていました。写真は自動車専門誌やウェブサイトでご覧になった方もいるでしょうが、プローバのBRZブラックエディションは東京オートサロンのコンセプトカー部門で優秀賞を受賞しました。私もこれならほしいと思わせる一台です。

 トヨタとスバルの協業は初めてのことですが、二社のエンジニアは文化の違う企業の壁を乗り越え、お互いに自分達ではおろせなかった十字架をおろし、見事な共同作業で開発を進めてきたのです。基本的にはトヨタが企画とデザインを担当し、開発と生産はスバルが担当しました。それはポルシェ・カイエンとフォルクスワーゲン・トゥアレグの協業に似ているかもしれません。

 私は昨年からプロトタイプに試乗していますが、今までスバルの自然吸気エンジンは大きな魅力を感じませんでした。しかし、今回はボア86mm、ストローク86mmのショートストロークエンジンを専用に開発し、7500回転までストレスなく吹け上がるすばらしいエンジンが開発されました。ボクサーエンジンと呼ばれる水平対向エンジンは対向するピストンが振動を打ち消し合うので、4気筒エンジンの中ではもっともスムーズに吹け上がるエンジンなのです。さらにボクサーエンジンは低重心が売りなので、前後重量配分だけでなく重心においても460mmという極めて低い数値を実用化しました。

 後輪駆動はドリフトだけが愉しさではないと思います。むしろドリフトは限界走行では避けて通れない現象ですが、それだけがFRのすべてではないのです。プロトタイプのBRZに乗った後で4WDターボのインプレッサに乗ると、ターボが古く感じてしまいます。爽やかに軽やかに走れるFRのスバルなのです。新しいスバルの体験をした以上、今後のWRXはもっと軽やかなハンドリングを実現しないといけないでしょう。

 試乗する前はノンターボのスバルにどのくらいの魅力があるのか不安でしたが、実際は大成功といえるでしょう。新しいエンジンをWRXにも載せたいくらいです。つまり、これからのスバルにとってBRZは走り味のベンチマークとなることが期待されます。ノーマルで充分完成されているのでFT86/BRZに乗ってクルマの愉しさの本質を味わっていただきたい。タイヤはトヨタ・プリウスにも採用されるミシュランを履いていますが、サーキットで走ってもなかなか減りません。これはエコの観点からも美徳と言えるでしょう。

 最後にトヨタとスバルのどちらが買いか?ですが、両車に大きな違いはありません。味の違いとしてスバルのほうが安定性は高いと思いますがこれは好みの問題でしょう。トヨタとスバルがコラボレーションして開発した2リッターFRスポーツのFT86/BRZ自体が大成功することは間違いない!と太鼓判を押します。その理由はいくつかありますが、とにかく走っていて愉しいし、気持ちが良いのです。パワーで押しまくるタイプの直線番長的なハイパフォーマンスカーと違って、清々しく走れると感じました。

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【DST#032】BMW116iスタイル vs フォルクスワーゲン・ゴルフTSIコンフォートライン(加減速篇) / BMW 116i Style vs Volkswagen Golf TSI Comfortline(5分48秒)
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東京オートサロン2012ハイライト / TOKYO AUTO SALON 2012 (4分35秒)
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ノルウェーゼロエミッション社会への挑戦 / Norway ZERO (7分2秒)
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Wheel Talk! 第22回ホイールトーク「2012年の自動車業界天気予報」Part.1/7(3分56秒)
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