2013年6月26日水曜日

【清水和夫メールマガジン】第35号 アーカイブス 2012.5.25

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2012年5月25日 第35号
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緊急提言第二弾 関越自動車道 藤岡ジャンクションのバス事故

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 信じられない事故の光景がTVや新聞で報道されました。まるで防音壁がバスを切り裂いたような悲惨なバスの姿を見て、私は真っ先に道路の加害性を疑いました。私は今から10年以上も前に『クルマ安全学のすすめ』(NHK出版)という本を上梓しています。この本は人とクルマと道路の三つの要素からなる交通事故の実体を基本に考えながら、クルマの安全技術について書きました。メルセデス・ベンツを取材すると、運転する人間の行動やぶつかる相手のことを知る必要があると知らされました。

 今回の事故は運転手が適正に運転していれば何の問題も表面化しなかったのですが、過酷な労働条件下での運転による居眠りが話題となっています。もちろん、プロの運転手なので、そのバスを運用していた企業の責任もありますし、価格競争が招いた結果だという主張も耳にします。しかし、どんな事情があろうと、多くの交通事故はドライバーのミスで生じることは周知の事実です。ゆえにドライビングをアシストする技術が存在するのです。また、ぶつかった時の被害を少なくするのは自動車に備わるベルトなどの拘束装置であり、こうした乗員保護装置があるから被害を少なくできるのです。これは自動車メーカーに課せられた義務なのです。

 また、道路管理者あるいは道路設計者はクルマがぶつかっても被害を拡大しないように安全な道路を設計し運用する義務が課せられています。その点、今回の高速道路の事故では、道路管理者であるNEXCO東日本や道路を所有する日本道路保有機構にガードレールや防音壁がクルマに対する加害性がなかったのかどうかの責任があるはずです。

 現場に行って、実際にこの目で見てわかった事があります。事故現場は県道が下に通る小さな立体交差となっており、橋の欄干はコンクリートでできていました。しかもコンクリートの端はスロープのような形状ではなく、直方体の形が剥き出しになっていました。金属でできたガードレールはその手前で終わっており、新しいガードレールならコンクリートの欄干にオーバーラップされるはずが、この場所の欄干とガードレールは繋がっていなかったのです。これが被害を拡大した張本人であり、防音壁は二次的な被害だと思いました。

 つまり、緩い左カーブの左車線を走っていたバスは100km/h近い速度で車線を逸脱し、左側のガードレールに浅い角度でぶつかった。ガードレールはバスの荷重に耐えきれず、外側に歪み、バスの軌道は完全に車線を逸脱してしまった。その結果、コンクリートでできた橋の欄干に25%くらいのオフセット衝突が生じたのではないでしょうか。

 このエネルギーを吸収しないコンクリートのリジットバリアがバスの正面から激突。その時の衝撃でベルトを装着していない乗員は瞬時に前方に投げ出されたのです。一列目に座って助かった乗員はシートベルトを装着していたことからも、その様子が想像できます。バスが軽量化のために強度不足という専門家の発言があったが、それは自動車工学の知識からはあり得ないことです。バスの強度の問題よりも、道路の加害性とバスにシートベルトが備わっていたのかどうか、あるいはベルト装着したかどうかが論点ではないでしょうか。

 最近、大型車が高速道路でからむ死亡事故が多いことから、大型車にプリクラッシュ技術が義務化されることになっていた矢先の事故でした。古いバスなどにはドライブレコーダーを装着したりしながら、日頃から「ヒヤリ&ハット」を監視する必要があると思っていました。今回のバス事故から技術的な検知で学ぶべきことを最後にまとめておきます。

道路側の課題
・車線逸脱は道路の白線にギザギザの横溝をつけることでも警告できた
・実際に現場を何度も走ってみたが、白線に横溝はなかった
・エネルギー吸収できない堅い構造物はガードレールでオーバーラップする
・古い道路を新しい道路の基準にアップデートする
・事故が多い道路区間にビデオカメラを設置し、何が起きているのか把握する

車両側の課題
・二点でもいいのでシートベルトを装備
・当たり前だが古いバスにはベルトがないケースもある
・高速道路では特にベルト装着は義務化
・トラックだけでなくバスにもプリクラッシュの義務化が必要

運用側の課題
・高速路線バスと貸し切りバスの違いを明確にする
・旅行会社とバス会社の安全意識を厳しくチェックする
・公共交通としての安全運用のガイドラインの設定する
・それらを違反した場合の罰則規定を厳しくする

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