2012年10月26日金曜日

【清水和夫メールマガジン】第19号 アーカイブス 2011.9.25

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年9月25日 第19号
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ASEANリポート第二弾

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 前回に引き続きASEAN市場をリポートをしたいと思います。あらためて説明すると、ASEANとは東南アジア諸国連合の略で、現在10カ国が加盟しています。その中でも金融の中心はシンガポールですが、産業的にはタイ、インドネシア、マレーシアの成長が著しいといえます。

 ASEAN地域の人口は2009年は約5.8億人と日本の約4.6倍。国土は約12倍ですが、一つの大陸に存在するわけではなく、幾つかの諸島を含むことため、様々な民族が独自の文化を持っています。欧州の多様性がしばしば話題となりますが、民族的にも宗教的にもASEANのほうが、はるかに多様な文化を持っているため、複雑な背景を持った地域だと感じる人が多いかもしれません。

 さて、ASEAN全体の一人あたりのGDPは、約2500ドルと日本の6.4%にすぎませんが、ASEAN都市部だけのGDPを考えると、4000ドルを超える地域が増えつつあります。過去のモータリゼーション方程式では、一人あたりのGDPが4000ドルを超えると、二輪から四輪に発展するといわれています。そしてその公式どおり、インドネシアの首都ジャカルタでは急速に自動車が普及し始めています。

 人口が多く、経済が発展すれば、当然自動車が売れるわけですが、ASEANの今後の可能性を地政学的に考えると、そのメリットはユーラシア大陸やアフリカ大陸の中間に位置していることが重要と考えられます。しかも中国はともかく、インドとASEANは水面下でFTA(自由貿易非関税協定)に関する包括的な交渉が行われています。もし、FTAが締結されると、ASEANとインド諸国を合わせて、約20億人が住む、巨大な自由主義の経済市場が誕生することになります。

 昨年、ASEANを中心に取材してきましたが、今まさに日本の自動車産業にとって一攫千金のチャンスがやってきたと感じています。一ドル70円台が当たり前の時代に、どう生き残っていくのか。その答えはASEANにあると考えられます。

タイのケース

 昨年、日産自動車は主力車種のマーチをタイで生産し、日本に輸入して販売を始めました。円高対策のように見えますが、ASEANを中心に考えれば、縮小気味の日本で、小型車を作る意味はたしかに見いだせないでしょう。マーチはタイだけでなく、NAFTA(北米自由貿易協定)を利用して、メキシコで生産し、インドや中国でも生産しています。必要とする市場でマーチを作る「地産地消」が、ゴーン社長を決断させたのではないでしょうか。

 マーチに続いて、昨年11月には本格的なアジア戦略車として開発されたホンダの小型車「ブリオ」をタイ・バンコックの自動車ショーで発表したことも重要です。タイといえばASEANの中心で、もっともモータリゼーションが進んでいる国です。11月に自動車ショーを取材するためにバンコックに行くと、朝夕の通勤時間こそ渋滞が酷かったものの、高速道路は整備されつつあり、近代的なモータリゼーションが始まりつつあると感じました。

 タイといえば、GMグループの一員であった時代にスバルが、タイ生産のオペルのミニバン、ザフィーラを「トラヴィック」の名前で輸入販売したことがありました。私の薦めで親戚がこれを購入しましたが、ドアの鍵が壊れた以外は、品質の問題はほとんどありませんでした。ポルシェが設計し、GMのタイ工場でノックダウン生産されたトラヴィックのステアリングを握りながら、タイの自動車産業の成熟ぶりを当時すでに感じていました。

 これまで、低価格車は新興国で現地生産し、ハイブリッドなどの高機能車は日本で生産するというのが日本の経営者の考えでしたが、タイではついにトヨタ・プリウスの生産が計画されています。現在インドで販売されるプリウスは、日本製であるために、関税などがかけられ500万円以上の高級車となってしまっているのです。ASEANとインドがFTAを締結すれば、自動車メーカーのASEANシフトの戦略は一気に進むでしょう。

 次回は実際に新興国で作られる低価格車の実力を検証したいと思います。


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2012年10月10日水曜日

【清水和夫メールマガジン】第18号 アーカイブス 2011.9.10

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~

2011年9月10日 第18号
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ASEANリポート第一弾

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 中国とインドの巨大な市場に挟まれるASEAN市場は、これからのアジア市場の重要なカギを握っているのではないでしょうか。

 私は昨年1月にインドデリーの自動車ショーを取材し、その後つづけて中国・北京、インドネシア・ジャカルタで行われた自動車ショーに足を運びました。
そして11月にはホンダのブリオが発表されると聞いて、タイのバンコック自動車ショーも取材しました。その経験から感じたことは、日本の1970年代と同じく、自動車の普及が経済成長のシンボルとなっているということです。

 今回から数回にわたり、ASEAN三カ国(タイ・マレーシア・インドネシア)の自動車市場についてレポートするつもりです。二つの大国に挟まれるASEANは地政学的には実に面白い市場ですが、ASEANとて単一市場として存在することは難しく、周辺国との関係あるいは国際社会の中で、どのように位置づけられるのでしょうか。ASEANを取り巻く環境から考えてみましょう。

巨大なアジア経済地域の中のASEAN

 アジアというと一般的には中国をイメージしてしまいますが、地図を広げてみると、ロシアを除いても実に広大な地域に広がっていることに気づきます。総務省のデータによると、この地域の人口推移は2050年にはなんと約90億人と予測しているのです。しかもその多くがアジアで増加することが示されています。

 すでに中国、インド、ASEANの各地域では自動車が爆発的に売れ始め、間違いなく巨大な市場が形成されることが予想されています。もちろん、急速なモータリゼーションは日本が経験してきたように都市の排ガス問題、交通事故問題、渋滞、さらにエネルギーセキュリティという魔の四点セットがつきまとうでしょう。こうした負の問題を抱えながらどのようにモータリゼーションを発展させるのか、明るい話題だけではなさそうです。アジアの一員である日本の役割は、とても大きいと思うのです。

 このメルマガをお読みになっている多くの方は、自動車産業という側面でASEANへの興味を持っていると思いますが、根源的にはアジアの人々がモータリゼーションによって移動の自由が守られ、多くの人の生活が豊かなになるという自動車本来の役割を忘れてはいけません。

 WBCSD(世界自動車会議)では、その国のGDPと国民ひとりひとりの移動距離は比例するというデータを発表しています。その意味ではアメリカが飛び抜けて移動距離が長いのは、土地が広いからだけでなく、広い土地を自由に移動できる航空機の発展があるからでしょう。自動車とともに飛行機がアメリカの富を支えてきたといえます。

 ということで大国中国の本当の成長は、国民ひとりひとりの移動距離がどのくらい伸びるのかにかかっているように言えます。日本の60年代がそうであったように、中国に於ける自動車の発展とモータリゼーションは、新しいライフスタイルを産み出すことは間違ありません。

 しかし21世紀的に考えるならば、環境意識を高めた自動車政策がとても大切となってくるのです。モータリゼーションが過熱するアジアの国々が、どのような環境意識を持っているのか、ここも重要な論点となるでしょう。

中国とインドに挟まれるASEAN

「乾いた砂漠に水を撒くように自動車が売れる」というのは、あるドイツメーカーの関係者の言葉ですが、アメリカメーカーの関係者も「2015年には3500万台市場」と中国の大胆な成長ぶりを予測しています。実際に今年の上海自動車ショーでは「中国の自動車市場がどれほど成長するか」で盛り上がっていました。

 たしかに13億人の中国が先進国なみの自動車普及率を達成すると、とんでもない数字になるかもしれません。しかし、中国で懸念されることは日本と同じ高齢化社会をすでに迎えているということではないでしょうか。

 産児制限を行い、人口増加を抑制してきたつけが、労働力の確保という自動車産業にとって大きな課題として生まれつつあります。自動車の販売台数の巨大な数字に隠れた今後の中国の先行きは、誰も予測できないのではないでしょうか。

 一方で中国と並んで人口の多い国がインドです。こちらは産児制限がないために、2030年には中国の人口を抜き、世界一の大国となると期待されています。しかし経済圏としてのインド諸国であるバングラディッシュやパキスタンを含むと、2005年にはインド諸国の人口は14.5億人(インドだけでは11.3億人)と13.1億人の中国をすでに抜いています。さらに、あと数十年は綺麗な形の人口ピラミッドを維持するので、当分良質な労働力が期待されます。

 しかも中国のように現地メーカーと合弁しなくても、単独で進出できるので、海外メーカーは投資しやすいのも有利です。このような理由から、インドの未来は希望に満ちているといえます。

 インドといえばスズキ自動車が先駆者として大きな存在感を示していますが、最近はトヨタ、ホンダ、日産も現地での生産体制強化を進めており、日本の自動車産業が本気でインドに進出しつつあるといえます。中でもホンダは二輪事業の成功体験から、四輪事業も拡大したいと伊東孝紳社長は積極的です。

 このように大国の中国とインドに期待が集まるなか、両国に挟まれるASEANの自動車産業がこれからどのように成長するのでしょうか。次回はいよいよ本論に入ってきたいと思います。

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Start Your Enginesから夏のプレゼント / Present from Start Your Engines(2分4秒)
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