2012年2月25日土曜日

【清水和夫メールマガジン】アーカイブス 2011.1.10

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~

2011年1月10日 第2号
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ダイムラーのツェッチェ会長と遭遇

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2010年10月、パリオートサロンの前に、メルセデスの新型CLクラス&Sクラスの試乗会が南フランスの保養地として有名なカンヌで開催されました。
この試乗会ではメルセデス(AMGも含む)の新しいマルチシリンダー(V6&V8)がデビューしましたが、カンヌで奥さんと休暇を愉しんでいたダイムラー社のディター・ツェッチェ会長と偶然に出会いました。出会ったというよりも、ツェッチェ会長がふらりと試乗会に現れたのですが、図々しくもインタビューを申し込むと快く受けてくれたのです。どんなインタビューだったのかリポートしましょう。

Q:次期スマート・フォー・フォーのプラットフォームを探しているとのことですが、ルノー日産と提携するという話がありますか?

ツェッチェ:ルノー・トゥインゴか日産マイクラを使う可能性があります。さらにルノー日産とのパートナーシップについては企業間の全般的な提携ではなく、プロジェクトごとにフレキシブルに考えています。メルセデスは小排気量の4気筒エンジンを必要としているので、ルノー日産とのアライアンスはとても重要です。

「後で、アメリカのスマート・フォー・フォーは日産ティーダを使うかもしれないというニュースが舞い込みました。アメリカのスマート総代理店はインディレースでも有名なペンスキー。アメリカではちょっと大きめの4ドアのスマートをほしがっているようです」

Q 日産のインフィニティ用にメルセデスのV型エンジンを供給する話は本当ですか?

ツェッチェ はい、日産はメルセデスの大きなエンジンに興味を持っています。大きいエンジンはメルセデスから供給し、小型エンジンはルノー日産から供給を受けます。

「パリサロンでは日産インフィニティのディーゼルも展示されていたのですが、将来はメルセデスのディーゼルも提供を受けるかもしれないと思いました。ルノーはプレミアム用のディーゼルを持っていないので、きっとメルセデスから調達するのでしょう」

Q 日本ではメルセデス・ブランドは古くさいイメージがあり、若い人はメルセデスを支持しないという傾向がありますが、それについて。

ツェッチェ 若者向けにCクラス以下のセグメントについて来年からどんどん新型車を出します。駆動方式はAクラスと同じFWD(FF)です。従来のような全高の高いモデルと全高が低いモデルも開発しています。そして、それらは大きなボリュームが期待されるのでハンガリーに新しく工場を造りました。

Q エンジンについては燃費がポイントとなるのでしょか。

ツェッチェ はい、環境性能はとても重要です。インテリアについては質感を高めたいと思っています。

Q 次は厄介な質問です。日本では「若者のクルマ離れ」が問題となっておりますが、会長はその話しをどうお考えでしょうか?

ツェッチェ:実はメルセデス・ベンツ・ジャパンからそういったリポートが送られてきており、真剣に考えています。しかし、年齢と買えるクルマの価格は非常に連動しているので、若い人は新車を買わないということは珍しくありません。昔は日本の若い人達がクルマに凄く関心があったのに、最近は関心が下がってきている現象は、日本が世界の先を行っているというふうに捉えるべきなのか、あるいは日本独特の現象なのか。そこが重要なポイントでしょう。しかし今この質問に答えられる人はいないでしょう。

Q なるほど、国によってクルマへの想いが異なるわけですね。

ツェッチェ 逆に他の市場を見ますと、若い人達の車に対する関心が高まってきている地域もあります。例えば中国がその例です。中国では最初のクルマを持ちたいという人が増えている。しかしインドはそれほどではない。ヨーロッパを見ても、フランスやイタリアでも違うわけです。フランスではクルマを多少ぶつけて傷がついたりへこむのは当たり前ですが、イタリアは少し濡れただけでも気にするとかね。さらに美しいクルマが走ってくると目に涙を浮かべてしまうような感情的な国民ですから。

Q 中国でメルセデスは急成長してますが中国仕様を開発しますか?

ツェッチェ 基本的に富裕層は自分で運転するのではなく運転手を雇います。ですからEクラスもロングタイプを出していますし、多少は中国のニーズにあわせていきますが、中国の富裕層は世界の動きをよく知っている人達なのでメルセデス本来の価値を理解しています。ですからメルセデスの中国化は余り心配しなくても良いと思います。

Q ありがとうござました。

人なつこくて、どことなく愛嬌があるダイムラー社のツェッチェ会長はフォルクスワーゲンのピエヒ氏と同じく親日家で知られています。彼と初めて会ったのは1997年のブリュッセルで開催されたAクラスの発表会です。商品企画の担当者だったので、自動車専門誌『NAVI』のスズキ編集長とインタビューをしたことがありました。彼はメルセデスの伝統に縛られない新しいモデルを開発する先陣を担ったのですが、その後のシュレンプ政権ではクライスラー社の会長となりアメリカで自動車ビジネスを経験したのです。

ダイムラー社はここ十数年の間に文字通り激動の時代を過ごしてきました。クライスラー社との合併、離散、Aクラスの横転問題によるリコール、Eクラスのバイワイヤー・ブレーキのリコールなど記憶に残る世界を騒がせたのです。また、いまでもパリ市内のある道路脇にはダイアナ妃を偲ぶために献花を見ることができますが、そのたびにメルセデスSクラスの後席で亡くなったダイアナ妃の交通事故を思い出します。

ツェッチェ会長の胸の中にもこの十数年の出来事は鮮明に記憶されていることでしょう。そして、現在ではルノー日産とのフレキシブルな提携や日本の若者のクルマ離れなどへの配慮など、過去の失敗から多くのことを学びながら新しい時代を切り拓く自動車界のリーダーの一人となったのです。パリオートサロンではダイムラー社は「ツェッチェ氏の名前で2011年1月29日に自動車の発明を発表する」と発表しました。はたしてどんな発明なのかその中身を早く知りたいのものです。

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Startyourengines.jp最新映像
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【DST#014】スズキ・スイフトXS vs 日産マーチ12G / SUZUKI Swift XS vs NISSAN March 12G(13分56秒)
http://www.startyourengines.jp/dst/2010/12/014.php

【DST#015】日産フーガ・ハイブリッド vs ホンダ・レジェンド・アドバンスパッケージ / NISSAN Fuga Hybrid vs HONDA Legend Advance Package(17分47秒)
http://www.startyourengines.jp/dst/2011/01/dst015_vs_nissan_fuga_hybrid_v.php

ロングインタビュー フォルクスワーゲンの未来を聞く ウルリッヒ・ハッケンベルク博士 / VOLKSWAGEN AG Dr. Ulrich Hackenberg (15分00秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2010/12/002394.php

Wheel Talk! 第17回「ゆらぎ理論の第一人者が語るクルマの魅力、教育者としての信念」(69分42秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2010/12/002413.php


旧車再生の道 ロッキーオート取材 / Rocky Auto(5分53秒)
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