2013年4月10日水曜日

【清水和夫メールマガジン】第30号 アーカイブス 2012.3.10

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2012年3月10日 第30号
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震災を振り返り自動車安全を思い出す

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 東日本大震災発生から明日で1年が経ちます。震災で亡くなったり行方不明になられたかたは約2万人を超えると言われています。われわれはとても悲しい災害に遭遇したことをあらためて感じます。しかし、その一方で日本の交通事故の年間死者数は、年々減少しているものの、まだ約5000人弱います(事故後24時間)。さらに事故後48時間では約7000人が交通事故の犠牲となっているのです。負傷者を含めると依然として約90万人の犠牲者がいますが、交通事故は大震災ほど記憶に残りません。

 クルマが普及し始めた1970年頃、年間の死者数は1万6000人超を記録しました。このときに交通事故対策が始まり、エアバッグもシートベルトも普及していないのに10年後の80年頃には死傷者数が半減しました。70年代の奇跡はなぜ起きたのでしょうか。私は単純な話だと考えています。それは国民が交通事故の実体を知り、事故を起こさないように気をつけたからに他なりません。その後、ふたたび事故死者数が増加し、88年に年間の死者数は1万人を数え、ふたたび減少しました。90年代以降の二度目の奇跡はどのような理由でしょうか? 政府と自動車産業が一体となって安全対策を強化し、いまや軽自動車でも小型車と同じ安全装備が備わるようになったからだと考えられます。

 ところが、最近、新しい傾向が生まれつつあります。それは自動車のドライバーあるいは乗員の死者数が減少する一方で、歩行中の死傷者が増加していることです。クルマの乗員は安全になりつつあるのに、歩行者が危険にさらされているのです。今の日本の交通事故は歩行者(自転車も含む)の安全対策がもっとも急務なのです。そこで昨年、大学教授と、自動車メーカーの安全担当者が「交通事故ゼロに向けた予防安全技術の開発普及」を目指す産学連携プロジェクト「FAST(Future Advanced Safety Technology)」を立ち上げました。

 発起人の一人である東京大学の鎌田実教授は、同大学の高齢社会総合研究機構の機構長でもあり、高齢社会の交通事故対策に精力を出しています。もう一人は東京農工大学機械システム工学科教授の永井正夫教授で自動操縦やヒヤリハットの交通リスクが専門です。自動車メーカーはトヨタ、日産、ホンダが中心となって大学と連携し、国土交通省が打ち立てた「10年間に年間死者数1000人減」という大きな目標をサポートすることを発表しました。私もFASTの発足記念シンポジウムにパネラーとして参加しましたが、久しぶりに自動車安全の専門家集団が集まったため、シンポジウムが終わったあとも夜遅く
まで安全対策の議論は白熱してしまいました。

 シンポジウムのパネルでは自動ブレーキとして有名になったスバルの「EYE-Sight(アイサイト)」が話題となりました。現在レガシィユーザーの80%がオプション価格の10万円を払って、「止まるクルマ」をチョイスしているのです。わかりやすいテレビCMや10万円という従来の安全装備よりも低価格な点が普及の決め手となりました。しかし実際の機能はまだ限定的で、別のメーカーのエンジニアはスバルの「EYE-Sight」では不十分だと考える人もいます。しかし、完全なシステムを作っても値段が高くて売れなければ何の意味もありません。まずは普及させ、段階的に機能を高めるというスバルの考えは妥当かもしれません。

 早くから予防安全技術にこだわってきたメルセデス・ベンツも、最近レーダーセーフティパッケージをEクラスに設定しました。すでに欧州では普及していたシステムですが、使用されるミリ波レーダーの周波数に問題があり、日本の総務省の規制にひっかかり利用できませんでした。しかし、規制緩和によってメルセデス・ベンツのシステムが日本でも使用できるようになりました。一方、ボルボは速度を限定していますが、シティ・セイフティの名前でスバルと同じような自動緊急ブレーキを実用化しています。来年にはフォルクスワーゲンのコンパクトカー、up!も30km/h以下で自動的にブレーキがかかるシティエマージェンシィ・ブレーキを低価格で実用化するといっています。世界的にこの予防安全技術は開発が進められています。

 このような技術は都市交通の追突回避や被害低減には効果がありますが、前述の歩行者の安全をどこまで守れるのかが大きな課題といえます。現在日本では前方認識型追従クルーズコントロールや自動ブレーキシステムの普及率は0.1%と悲しい数字です。そのため高価なシステムは「どうせ売れないのだから、とりあえず開発して終わり」という雰囲気が自動車メーカーの開発陣にありました。しかし今後はメーカー間での競争と協調を明確にして、予防安全技術を一台でも多く普及させることが必要なのではないでしょうか? 毎年大災害なみに多くの被害者を生む自動車事故をいかにして減らしていくか、自動車メーカー間で問題意識を共有することが求められています。

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