2012年11月26日月曜日

【清水和夫メールマガジン】第21号 アーカイブス 2011.10.25

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年10月25日 第21号
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ASEANリポート第三弾

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ホンダのアジア戦略

 農業国であるタイは、経済成長を目指して1980年代からバンコック周辺に工業特区を用意し、世界中の自動車メーカーの誘致していました。なかでも日本メーカーは古くからタイに進出し、自動車やオートバイの現地生産を始めていました。こうした工業化の流れは新興国の特徴ですが、タイを中心とするASEAN全体に広がっていることは周知の事実です。

 しかしそのタイを50年ぶりという大洪水が襲い、今でも予断を許さない状況が続いています。新興国ビジネスで収益をあげている日本の自動車産業にとって、今回のタイの大洪水は、想像もできないほどの影響を及ぼしているのです。

 さて、そのタイで生産されていたホンダ・ブリオは「タイとインドでは図面も異なる」と伊東孝伸社長は述べているように、そのコンセプトは本田宗一郎さんが説いた「MM思想(マンマキシマム・メカミニマム)」に基づいています。渋滞が激しい新興国の都市では、まず使いやすいサイズを追求し、全長3610mm×全幅1680mm×全高1485mmというコンパクトなボディを実現しています。

 すでにタイでは、フィットなど現地生産されていますが、ブリオはその下のエントリーカーとしてラインアップされるため、1.2リッターのi-VTECエンジン(ガソリン)を搭載して約40万バーツ(約108万円)で販売されています。部品の現地調達率は95%と高いですが、インドやASEANで成功している二輪事業を見習って作られます。販売台数は当面、年間4~5万台ですが、ASEAN諸国への輸出も考えられています。

 マーチも同じだが、ブリオはタイ政府が定めるエコカーの対象車です。その規定の排ガス規制値はユーロ4と緩いのですが、燃費目標値は日本よりも厳しく、欧州の燃費測定法(ECE・R101モード測定)で定める5リッター/100km以上を満たさなければなりません。つまりリッター20km以上の燃費に合格しないと減税されないのです。この数値は欧州におけるトヨタ・プリウスの燃費が、リッター25km前後なので、かなり厳しい。タイのモード燃費は、日本よりもはるかに実燃費に近いので、日本の燃費計測のように特殊な「小手先技術」がきかないのです。

 そのため、ブリオには転がり抵抗が少ないミシュランタイヤを履き、床下は空気抵抗を減らす工夫が凝らされています。まだテストドライブしたことはありませんが、タイ製ブリオはとても実用的なエコカーであり、「安いだけ」のアジアンカーの偏見は捨てるべきと感じさせます。

 タイがASEANの中心として持続可能な発展を続けるためには、世界に通じる自動車政策を実施すべきと考えられています。エコカー減税が得られる条件は下記のとおりです。

1)燃費が5リッター/100km(=リッター20km)以上※EUモード燃費
2)欧州排ガス規制ユーロ4厳守
3)投資額50億バーツ以上
4)事業開始から5年以降、年間10万台以上製造

 これらの条件をクリアすると、自動車を買う時に特定消費税が減税され、さらに法人所得税や設備・機械の輸入関税も免除されるのです。

 冒頭書いたように、「タイとインドのブリオは図面も異なる」とはホンダの伊東社長のコメントです。現地の部品メーカーを使うため、たとえばボディで使う鉄鋼は、インドの製鉄を使うことになります。

 先進国の工場で使われている超高張力鋼板は新興国では入手できません。したがって現地で調達できる部品を使った設計が必要になるのです。また、ニーズも微妙に異なるといいます。インドでは頻繁にホーンを鳴らす習慣がありますが、タイではあまり使われません。そのためインドのブリオは、タイ向けブリオよりもホーンの大きさや耐久性も気にする必要があるのです。

 さらに、インドでは後席に四人乗ることも考慮しないといけません。先進国の常識が通用しない国は、数多くあり、あくまでも現地のニーズを見合ったクルマを現地で生産することが重要なのです。伊東社長の言葉を借りると「図面の現地化」が求められているのです。

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