2013年9月25日水曜日

【清水和夫メールマガジン】第41号 アーカイブス 2012.8.25

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清水和夫メールマガジン〜自動車大航海時代〜
2012年8月25日 第41号
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東京大学トークショー2010 最終回

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 7回にわけてお届けしてきました東大でのトークショーもついに今回で最終回を迎えます。最後に清水和夫から東大生へのメッセージもありますので必読です。

飯塚 日本の車産業における絶対的な強みは何ですか?

清水 ノンポリが強みになると思います。この言葉は正しくないかもしれませんが、あまり一つのことに決めないで、のらりくらりと何も決めないけど、なんでもやるみたいな感じなのです。

こうした優柔不断さは多様性が求められる時代には相応しいかもしれません。(写真を見せ)これは去年の1月のデリーショーのスズキのブースの裏側で、ブースをつくった人たちです。何故帰らないのかを聞いたら、帰ったら壊すときに仕事がなくなってしまうと言うのです。

2週間後にもう一回壊す仕事が欲しいから、ずっとここにいる。これは本当の話です。デリーはインドの中で一番先進的な都市ですから、インドの人たちは生きるために、生活をするために、クルマが必要なのですね。ジャカルタでは、急速にクルマが増えて日本車比率は90%で、トヨタ、ダイハツのシェアが50%です。インドではスズキの乗用車だけで約70%のシェアがあります。

ここにトヨタやホンダも出てきますから、インド市場は相当日本車が強い。ジャカルタも強い。タイも強い。中国だけを見ていると、世界のいろいろな自動車メーカーがそこで競争しているように見えますが、アセアンやインドに行くと、日本車は相当強いです。

なぜなら現地の人に合わせてクルマをつくりますからね。図面も生産も現地化しています。

例えば何故インドネシアでトヨタが強いかというと、キジャン・イノーバという車があります。これは日本に入っていない、スペースフレーム構造のFRのミニバンです。何故フレームかというと、板金しやすいからで、トヨタが設計しています。何故FRかというと、道の悪いところがあるからFFだとだめだということです。

飯塚 FRというのは何ですか?

清水 前にエンジンがあって後ろのタイヤで駆動するのが、「フロントエンジン・リアドライブ(FR)」です。普通のクルマは前にエンジンがあって、前のタイヤで駆動するので「フロントエンジン・フロントドライブ(FF)」と区別しています。

道の悪いところで坂道が上れなくなってしまうので、FRのほうがいい。四輪駆動にすると贅沢税が取られるから二輪駆動のFRでなければだめです。その国に合わせて車をつくっているのが日本車のいいところで、逆に言うとポリシーがないとか、ブランドがないとか、横串がないといわれますが究極のヨーロッパ車がプレタポルテ(既製服)で日本車がオートクチュールなのかもしれませんね。

その国で必要な車を少ないエネルギーでつくってあげたほうがはるかにいい。こういうことは何のポリシーもない日本人のほうがむしろつくれるのではないかという気が最近しています。

日本は「ガラパゴス」と言われていますが、アジアを回ると意外にこのガラパゴスもたくさんの種類を持つと強いのではないかという気がします。ドイツのフォルクスワーゲンは、一番安い車がポロです(2011年にはエントリーカーのUP!が発売されましたが)それより安い車は、ルノー・ローガンなどです。

つまりフォルクスワーゲンはドイツの国民車でしたが、一番安い車をつくれないぐらいになってしまった。そういうフォルクスワーゲンが新興国に出ていったときに、現地の人たちのニーズでつくれるかといったら、ドイツ人の哲学やブランドがかえって邪魔をするかもしれません。ノンポリのほうが都合がよい時もあるのですね。

清水和夫→東大生へのメッセージ

清水 今、日本は非常に閉塞感があります。1人当たりのGDPで大体3000ドルを超えるとオートバイから四輪へユーザーがシフトすると言われています。

しかし日本とアメリカは同じ先進国ですが、半分のエネルギー消費で同じGDPを稼いでいるという事実があります。

これからあと25年で自動車は9億台増えると言われています。今、68億人の人口と9億台のクルマが地球上で走っています。100年かかって9億台になったクルマが、次は25年で2倍になるのです。

その9億台がどこで増えるかというとほとんどがアジアだと言われています。もしアメリカと同じエネルギー消費のライフスタイルを真似すると、圧倒的にエネルギーが不足します。

ですから、日本型の産業システムを世界が真似しなければならないのです。最近インド政府もエネルギーの問題が深刻になってきたので、日本の企業と一緒にやるケースがあります。中国のように大量にエネルギーを消費するアメリカ型モデルでは、この作でエネルギ
ーが本当に足りなくなる。

 日本で省エネということは、ある意味で今までの私たちのしみついたDNAです。半分のエネルギーで同じGDPを稼げる社会があるとしたら、新興国の人たちにこのプラットフォームを提供していけば、いわゆる持続可能な社会は可能です。

ライフスタイルを変えないで、車やほかの機械だけで、あるいは技術だけでエネルギー消費を半分にすることは非常に難しい。洞爺湖サミットで2050年にCO2排出を半減とG8は公約しましたが、それを全部自動車や技術だけでやるのは大変です。いかにライフスタイルから入っていくかが解決策になるのかもしれません。

 エネルギーの問題は、そのまま私たちの文明社会に直結していく問題です。僕は一クルマ屋ですが、車から見ただけでも少しライフスタイルを変えると、たとえばメルセデス・ベンツのスマートを買ったらこんなに楽しいというのに今まで気がつかなかったのですね。

自分がオーナーになってみたら、荷物を満載して片道200キロぐらいまで意外と平気で走っていってしまうのです。そうすると、スマートでこんなに長距離できることに何故今まで気がつかなかったのか、ちょっと悔しい。

どうしても長距離だとでかいエンジンで、V8で行ったほうが楽だと思ってしまいます。しかし、スマートでいくと逆にでかいエンジンで走っていったときに気がつかなかったことにたくさん気がついたりします。

ですから自分たちのパラダイムを変えることで、環境問題の大きな解決をアシストできることがわかってきました。そういう意味で、日本は今、閉塞感があって元気がないのですが、アジアの人たちから見るともしかしたら「坂の上の雲」は欧米ではなくて日本かもしれませんね。自分たちの価値を再発見して、もっともっと自信を持ってやっていけということが少しずつ今わかってきました。

 去年、精力的にアジアのいろいろな国に行きましたが、いずれケニアあたりのモーターショーに行ってみようと思います。世界は広く、もうグローバル化なんていうのは存在していない。

実は、一つの価値で世界じゅうのマーケットに出ていく車なんていうのはありません。それぞれの国の人たちが求める車を御用聞きのように聞いてあげて、つくっていってあげるのは、むしろ日本のほうが得意ではないかという気がしてなりません。ライフスタイルとエコカーの関係で話しましたが、今年はみんなで元気を持ってやっていける年だと思いま
す。

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【DST#番外篇】2011年ダブルレーンチェンジトップ10、7位〜10位 / 10 best Double lane change (7分14秒)
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ルボラン カーズ・ミート2012 / LEVOLANT CARS MEET 2012 (8分57秒)
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エンジョイ・ホンダ 2011 (前篇) / Enjoy Honda 2011 (11分48秒)
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エンジョイ・ホンダ 2011 (後篇) / Enjoy Honda 2011 (11分43秒)
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ブガッティ・ヴェイロン300km/h超の世界 / BUGATTI Veyron(5分49秒)
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最新911カレラのカブリオレを解説 / PORSCHE 911 Carrera Cabriolet (7分32秒)
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フォルクスワーゲンの気筒休止 / VOLKSWAGEN Polo Blue GT(6分7秒)
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電気自動車でロングツーリングに挑戦! / TESLA Roadstar(8分26秒)
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【Start Your Engines Chronicles 2001】スバル初のミニバン、トラヴィック / SUBARU Traviq(5分58秒)
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