それを地球からの遠隔補正でサポートするというハイブリッド航法で、惑星間往復を無人で行った人類最初の探査船でした。しかも、通常のロケットのような化学エンジンよりも10倍も効率のよい世界初のイオンエンジンを使い、核燃料に頼らず、太陽系の星々の引力をうまく利用しながら航行する“スウィングバイ”を成功させました。
それだけではありません。今、話題の東京スカイツリーよりも小さい星に着地してサンプルを採取し、再起不能に近いトラブルを切り抜けて無事に地球に持ち帰ったというのですから、驚くべき快挙です。それらに加えて、03年5月9日13時29分25秒の打ち上げ以来、帰還までの7年1カ月、24時間態勢で、ひたすら相手に寄り添い、「待つ」ことに徹したスタッフたちの姿勢は、まさに人生の教訓をもたらしたといえるでしょう。
事実、サンプル採取後の姿勢制御の不調から5週間も音信不通になり、そのため帰還軌道に乗り損なって3年間、暗黒の宇宙で待機することになった「はやぶさ」、満身創痍(そうい)になりながらも、けなげに帰途についた姿を見守るまなざしは、世間の関心を集め、「はやぶさくん」と呼ばれるようになりました。