2014年2月25日火曜日

【清水和夫メールマガジン】第51号 アーカイブス 2013.1.25

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清水和夫メールマガジン〜自動車大航海時代〜
2013年1月25日 第51号
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NSXへの期待

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 前回はレクサスISについて書きましたが今回はホンダのスーパーカーNSXについて書きたいと思います。

 NSXが紆余曲折しながらも2014年ごろに次期型モデルが復活します。
先日のデトロイトモーターショーでも、次期モデルは初代NSXとは異なり、3モーターのフルハイブリッドで開発されていることが明らかにされています。ミドに搭載されるV6エンジンとモーターを内蔵するDCT(デュアルクラッチ)でリアを駆動します。

 これだけなら単なるミドシップ・ハイブリッド・スポーツカーですが、次期NSXはなんとフロントに左右独立した二つのモーターを配置します。つまり前輪が必要に応じてモーターで駆動するオンデマンドな電動四駆といえます。
多めのリチウムイオン・バッテリーを積めば、なんとプラグイン・ハイブリッドにもなってしまうでしょう。このコンセプトは紛れもなく今年9月18日にラインオフされる予定のポルシェ918と同じコンセプトなのです。918は6000万円以上もするウルトラ級のスーパーカーですが、NSXはおそらく2000万円以下で市販するはずです。

 ハイブリッドだからオリジナルのNSXとは魂が異なる、といわれそうですが、冒頭に書いたようにNSXという名前に隠された魂はパワーで相手と勝負するパワーウォーズ型スポーツカーではなく、「あしたのジョー」的に知性で相手を倒すスポーツカーといえるでしょう。

 パワートレーンは昨年LAショーでホンダの高級ブランド「アキュラ」から発表されたフラグシップモデルLRX(日本名レジェンド)でデビューしました。V6エンジンとモーターを内蔵したDCTで前輪を駆動し、後輪は左右独立のモーターでアシスト的にリアの駆動力を発生させる仕組みです。これは従来から市販されるSH−AWDの電動駆動版といえます。アキュラLRXにはこのパワープラントが搭載されますが、ユニークなのはリアの左右独立モーターがベクタリング機能を持っていることです。リア左右の電気モーターによるベクタリングで駆動力を制御できるのです。

 エンジンは3.5リッターV6の直噴自然吸気エンジンに30kW前後のモーターが7速DCTに組み込まれます。リアのモーターはそれぞれ20kW前後の出力を持ちます。三つのモーターをすべて合わせると70kWのパワーとなります。エンジンが300馬力だとすると、モーターで約100馬力発生するので400馬力級のパワートレーンとなります。このパワートレーンが前後反転してミドシップのNSXに搭載されるわけですが、高度にチューニングされたエンジンは軽く400馬力前後となりそうなので、モーターと合わせると500馬力が次期NSXの戦闘力と予想されます。

 2008年前後に企画されていたV10のスポーツカーは伊東孝伸社長の決断で開発を中止されました。ハイブリッドでもないV10エンジンとSH−AWDのパッケージのNSXがもし、今の時代に市販されたなら、きっとレクサスLFAと同じ運命を辿ったに違いありません。その意味では伊東社長の判断は正しかったと思います。その代わりに生まれるのが、プラグイン・ハイブリッドのスーパースポーツです。タイプRがあるとしたら、プラグインはやめて軽量モデルとして登場するでしょう。500馬力でGT−Rのニュルブルクリンクのタイムを凌駕するのは可能でしょうか? 考えるだけでわくわくします。

 私はその秘密兵器といえるのがフロントの左右のタイヤをモーターでベクタリングする電動SH−AWDではないかと考えています。前述のようにモーターでベクタリングすると、内輪は回生ブレーキとなるので、電力を生み出します。その電気エネルギーを外輪に伝えると駆動力となります。つまり、電動SH−AWDはエネルギーを左右のタイヤでやり取りすることが可能なのです。
 しかもクルマの旋回性能をモーターでアシストできるので、旋回速度は想像もできないほど速くなるでしょう。エンジンのパワーを高めて直線を速くする従来の手法ではなく、柔よく剛を制すの魂でコーナーリング性能を高めることでサーキットの速さを実現しようとしているのです。

 初代NSXが280馬力でも400馬力級のスポーツカーを追いかけることができたのは「軽さ」でした。今度のNSXは「軽さ」に加えて「知的さ」で勝負するはずです。NSX開発チームはポルシェ918をベンチマークとしていますが、ポルシェ918はいまだ全貌が見えてきません。その918のニュルブルクリンクのラップタイムは7分10秒前後と予想されています。もはやラップリーダーはGT−Rではなくこれらのハイブリッドスポーツカーなのです。

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【DST#051】BMW 640iグランクーペ vs アウディA6ハイブリッド / BMW 640i GranCoupe vs AUDI A6 Hybrid(加減速篇)(7分42秒)
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2014年2月10日月曜日

【清水和夫メールマガジン】第50号 アーカイブス 2013.1.10

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レクサスISの実力

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 ついにレクサスが次期ISの外観を明らかにしましたが、昨年プロトタイプに試乗した際の印象について書きたいと思います。

 プロトタイプ試乗会は、スパイフォトの餌食にならないように、外観こそ明かされませんが、新型車に採用される新しい技術やメーカーの考え方をいち早く知るには都合がいいのです。このような発表前の事前試乗会は欧米では「ロングリード」と呼ばれ、頻繁に行われています。

 アメリカで生まれたトヨタの高級ブランド、レクサスはロングリードを「LEXUS Meet the engineer」と呼び、世界の主要国メディアを招いて開催しました。レクサスが最も売れているカリフォルニア州ロサンゼルス郊外で確かめた新型ISシリーズの実力を報告します。

 我々の前に姿を現したのはカモフラージュしたプロトタイプです。奇妙奇天烈な唐草模様のフィルムを纏っているので、かえって目立ってしまうのでは、と心配になります。今回明らかになったスペックはボディの3サイズだけですが、よく見ると全体のシルエットは想像できました。新型ISは2012年に市販されたGSのプラットフォームを基本として開発されています。そのためGSよりもコンパクトなボディですが、先代のISより若干大きくなりました。

 ボディサイズは先代のISよりも全長が75mm長くなり、4660mmとなりました。ホイールベースは70mm伸びて2800mm。これなら後席にゆったりと座れるでしょう。全幅は12mm広く1812mmとなりました。しかし小さな高級FR車として支持されてきたため、大きくなったことに不安を感じます。

 コンパクトな高級FR車のルーツは1980年代に登場したメルセデス・ベンツ190Eです。190Eこそ、現在のプレミアムコンパクトセダンのメートル原器です。190EからCクラスに発展し、ISはもちろんアウディA4やBMW3シリーズにも影響を与えています。レクサスISは190Eのエッセンスを持っていることが、大きな価値でした。少し大きくなったとはいえ、最近のCクラスや3シリーズを見てもわかるように1800mmがスタンダードとなっているので新型ISはグローバルには的を射ているといえます。

 ボディ技術は剛性と軽量化のために、接着剤やレーザー溶接などを多用しています。とくに接着剤はレクサスとしては新しい取り組みといえます。ISの開発を指揮する古山淳一チーフエンジニアは、エモーショナルな走りの実現を掲げており、そのためにも、ボディ剛性が重要であると述べています。たしかに、先代のISよりもステアリングの手応えはグッと重みを増し、タイヤのグリップ感がしっとりと伝わってきます。この感覚はBMW3シリーズに似ていると思いました。

 エンジンは3.5リッターV6と2.5リッターV6のガソリン・エンジンとさらに待望のハイブリッド「IS300h」が仲間入りしました。このハイブリッドには新開発の2.5リッター直噴4気筒エンジンが搭載され、トヨタ独自の2モーター・ハイブリッドTHSが組み合わされます。スペックは現時点でまだ未発表ですが昨年12月25日に発売した新型クラウンにも同じハイブリッドシステムが採用されるので、そこから推測すると最大トルクは300Nm前後のトルクを発生するはずで、このパフォーマンスなら充分な加速が期待できます。

 欧州ではそれまで販売していた2リッターディーゼルは姿を消し、IS300hが追加されました。つまり、レクサスはガソリン・ハイブリッドでディーゼル・エンジンに対抗する覚悟なのです。IS300hの燃費性能はBMW320dよりもCO2排出量で優位に立とうという目標を持っています。欧州混合モードのCO2排出量で100g/km以下を狙っているそうです。条件は異なりますが、日本ではリッター22km前後の燃費が期待できます。

 実際に乗ってみると、従来の退屈だと思われがちなハイブリッドではなく、肉食系とまではいきませんが、ある程度パフォーマンスと燃費性能がうまくバランスしていると感じました。そういえばISの名前は「インテリジェント・スポーツ」を由来としているので、ハイブリッドこそISにもっとも相応しいパワープラントかもしれません。

 特設コースでジムカーナを試しました。軽量なスポーツセダンらしく、3.5リッターV6を積むIS350は、非常にホットでした。濡れた路面ではドリフト走行も自在にと言いたいところですが、シャシー性能がまだ完成されていないので、タイヤが滑り出す領域では走りにくい部分もあったのも事実です。試乗会で酷使されたため、タイヤが偏摩耗していたことが原因のようです。

 IS350には8速トルコンAT、ベースモデルにはIS250には6速トルコンAT、ハイブリッドのIS300hには電気式CVTが組み合わされます。ということはISは、なんと三種類のギアボックスを持つのです。さらに、ステアリングもVGRS(可変ギアレシオステアリング)とノーマル・ステアリングの二種類が用意されます。さらにブレーキもハイブリッド用のバイワイヤーブレーキとノーマルブレーキが用意されます。色々なユニットがモデルごとに組み合わされるので、どれが本当のISの実力なのでしょう?

 おそらくハイブリッドが4番バッターであることは間違いありません。そして可能ならばハイブリッド車にVGRSのステアリングを組み合わせてほしいと思います。せっかく電気式CVTとエンジン特性を見直したことでリニアな加速が愉しめるようになったので、ダイレクトなステアリングVGRSが加わればIS300hは世界のライバルと戦えるでしょう。

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