2012年5月23日水曜日
2012年5月10日木曜日
【清水和夫メールマガジン】第8号 アーカイブス 2011.4.10
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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年4月10日 第8号
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スバルに見る航空機と自動車の相似(後篇)
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前回に続いて富士重工業航空宇宙事業本部の取材について書きたいと思います。
「飛行機が美しいのは無駄がないからです」と熱く語ってくれたのは、富士重工業航空宇宙事業本部宇都宮製作所の星恒憲所長(当時)です。「無駄のないレイアウトがスバル車のコアかもしれない」という竹中恭二社長(当時)の言葉を思い出しました。そのこととクルマがドライバーに操縦の喜びを与えてくれることには、関連があるのではないでしょうか。このあたりの“秘密”を私は知りたいと考えました。
宇都宮製作所はどこか静寂感が漂う工場です。ここには2600人もの人間が働いているのですが、多くのロボットが作業する近代的な設備の工場とは趣を異にします。じっくり観察すると、むしろ職人が黙々とモノ作りに励む、工房という印象でした。
星所長は「航空機産業は先進的なデジタル技術で設計しておりますが、モノ作りの現場は、かなり手作りの感覚です」と語ってくれました。この事業所では防衛庁の航空機のメンテナンスや部品の設計と並行して、ボーイング社の機体の一部を生産していましたが、依然として職人の技が必要なのです。航空機産業にこそ日本人の「器用さ、丁寧さ」が役立つと感じた瞬間でした。
ジャンボ機に活かされる織物の技術
たとえば、ハイテク機ボーイング777にもこだわりと、それを支える職人の存在が認められます。最も驚いたのは777のメインギア(着陸装置)の格納ドアの製作現場でした。航空機にとって軽量化と耐疲労強度を高めることは非常に重要だといいます。設計の現場ではグラム単位で軽量化を考え、場所によってはミクロ単位の精度が要求されます。例えば、777のメインギア格納ドアは、最新技術であるカーボンの複合材で作られていました。カーボンはF1のモノコックボディとしても採用される軽量な素材です。ここでは一枚一枚
のカーボン繊維を幾重にもレイアップ(張り合わせ)され、日本人が昔から得意としている織物の技術が活かされているのです。まるで特注の着物を織る職人のような手さばきで作業が進む光景に私は驚愕しました。わずかな埃が混入しても品質に影響するので、密閉された作業場は大気圧よりも少し高めの気圧が維持されているのです。
ボーイング777の主翼部分には300トンの機体が2Gを受けた荷重、600トンもの力がかかるといいます。複合素材(カーボン)を用いたものとしては当時でも世界最大級のもので、4.6×2.6mほどの大きさがありました。重量はわずかに一枚300kg。主翼は飛行機の構成部品の中でも特に技術力が必要とされる箇所ですが、スバルは主翼メーカーと言われるほど実績をもっています。
カーボンの複合材がレイアップされると、次にオートクレーブ(加圧高温釜)で時間をかけて灼かれることになります。この際重要なのは温度を上げる時も下げる時も均一に温度管理をすることだそうです。航空機技術と自動車技術を較べると、航空機生産には手作り感覚が色濃く残るのに対し、クルマ作りは大量生産技術を推し進めているということです。
曲がるために必要なパワー
そこから導き出されるクルマ作りと飛行機作りの結びつきとはなんでしょうか?
私は取材中、中川良一さんとお会いした時のことを思い出しました。中川さんは中島飛行機の技師でした。ゼロ戦のエンジン開発に携わり、「1000馬力級のエンジンを作ること」に青春のすべてを捧げたかたで、後にプリンス自動車に入り、グロリア、スカイラインなどを開発しました。中川さんの職場仲間だった百瀬晋六さんはスバルに残り、長谷川龍雄さんはトヨタに、そして中村良夫さんはホンダでクルマを作ることになりました。
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スバルに見る航空機と自動車の相似(後篇)
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前回に続いて富士重工業航空宇宙事業本部の取材について書きたいと思います。
「飛行機が美しいのは無駄がないからです」と熱く語ってくれたのは、富士重工業航空宇宙事業本部宇都宮製作所の星恒憲所長(当時)です。「無駄のないレイアウトがスバル車のコアかもしれない」という竹中恭二社長(当時)の言葉を思い出しました。そのこととクルマがドライバーに操縦の喜びを与えてくれることには、関連があるのではないでしょうか。このあたりの“秘密”を私は知りたいと考えました。
宇都宮製作所はどこか静寂感が漂う工場です。ここには2600人もの人間が働いているのですが、多くのロボットが作業する近代的な設備の工場とは趣を異にします。じっくり観察すると、むしろ職人が黙々とモノ作りに励む、工房という印象でした。
星所長は「航空機産業は先進的なデジタル技術で設計しておりますが、モノ作りの現場は、かなり手作りの感覚です」と語ってくれました。この事業所では防衛庁の航空機のメンテナンスや部品の設計と並行して、ボーイング社の機体の一部を生産していましたが、依然として職人の技が必要なのです。航空機産業にこそ日本人の「器用さ、丁寧さ」が役立つと感じた瞬間でした。
ジャンボ機に活かされる織物の技術
たとえば、ハイテク機ボーイング777にもこだわりと、それを支える職人の存在が認められます。最も驚いたのは777のメインギア(着陸装置)の格納ドアの製作現場でした。航空機にとって軽量化と耐疲労強度を高めることは非常に重要だといいます。設計の現場ではグラム単位で軽量化を考え、場所によってはミクロ単位の精度が要求されます。例えば、777のメインギア格納ドアは、最新技術であるカーボンの複合材で作られていました。カーボンはF1のモノコックボディとしても採用される軽量な素材です。ここでは一枚一枚
のカーボン繊維を幾重にもレイアップ(張り合わせ)され、日本人が昔から得意としている織物の技術が活かされているのです。まるで特注の着物を織る職人のような手さばきで作業が進む光景に私は驚愕しました。わずかな埃が混入しても品質に影響するので、密閉された作業場は大気圧よりも少し高めの気圧が維持されているのです。
ボーイング777の主翼部分には300トンの機体が2Gを受けた荷重、600トンもの力がかかるといいます。複合素材(カーボン)を用いたものとしては当時でも世界最大級のもので、4.6×2.6mほどの大きさがありました。重量はわずかに一枚300kg。主翼は飛行機の構成部品の中でも特に技術力が必要とされる箇所ですが、スバルは主翼メーカーと言われるほど実績をもっています。
カーボンの複合材がレイアップされると、次にオートクレーブ(加圧高温釜)で時間をかけて灼かれることになります。この際重要なのは温度を上げる時も下げる時も均一に温度管理をすることだそうです。航空機技術と自動車技術を較べると、航空機生産には手作り感覚が色濃く残るのに対し、クルマ作りは大量生産技術を推し進めているということです。
曲がるために必要なパワー
そこから導き出されるクルマ作りと飛行機作りの結びつきとはなんでしょうか?
私は取材中、中川良一さんとお会いした時のことを思い出しました。中川さんは中島飛行機の技師でした。ゼロ戦のエンジン開発に携わり、「1000馬力級のエンジンを作ること」に青春のすべてを捧げたかたで、後にプリンス自動車に入り、グロリア、スカイラインなどを開発しました。中川さんの職場仲間だった百瀬晋六さんはスバルに残り、長谷川龍雄さんはトヨタに、そして中村良夫さんはホンダでクルマを作ることになりました。
中川さんの言葉でもっとも印象に残ったのは「航空機の世界には“馬力二乗の法則”というものがあり、エンジン出力を2倍にするなら、機体は4倍の性能を必要とする」とおっしゃったことです。
航空機においてはエンジンのパワーは非常に重要な意味を持っています。高度の上げ下げだけでなく、旋回時には失速するためエンジンパワーが必要です。敵機を追いかけたり逃げる時には、急旋回の性能が必要です。この性能を決めるのは機体とエンジンだといいます。戦闘機の命をかけた空中戦が繰り広げられる時、総合的な運動性能が勝ち負けを決します。激しい運動に耐えうる機体性能が必要なのです。この法則は、そのままクルマにもあてはまりそうです。たとえば高いパフォーマンスを持つスポーツカーほど、「馬力二乗の法則」は重要な意味をもつでしょう。
つまり航空機メーカーであったスバルに脈々と流れる馬力二乗の法則は、現代のスバル車にも受け継がれています。前述の徹底した合理主義と馬力二乗の二つの法則がスバルの源流ともいえる思想なのです。
取材の最後に、航空部門と航空宇宙部門の技術的交流はあるのか、と星さんに尋ねてみました。星さんは「東京都三鷹市の技術研究所で技術部長会議を行い、互いに技術をフィードバックしています」と胸を張って答えました。さらに「航空分野を持つ自動車メーカーと持たない自動車メーカーに差があると思いますか?」という次の質問にも、「もちろんです」と力強く答えました。「航空機は100%予防安全ですから」。航空機のパーツで驚かされたのは、タバコの箱ほどの小さなパーツにも検品をした人間の名前が記される厳格さです。
私はスバルの「何か」がわかったような気がしました。
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私はスバルの「何か」がわかったような気がしました。
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2012年4月26日木曜日
【清水和夫メールマガジン】第7号 アーカイブス 2011.3.25
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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年3月25日 第7号
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スバルに見る航空機と自動車の相似
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2002年の春、私は富士重工業の航空宇宙事業本部を訪問しました。そして、この日を境にスバルが作るクルマを見る私の目が変わりました。いや、もっというと戦前から培われてきた日本の工業の底力を知りました。それについて二回にわたって感じたところをお伝えしたいと思います。今回はまず富士重工業が自動車を作るに至った経緯について書きたいと思います。
2002年の春、私は富士重工業の航空宇宙事業本部を訪問しました。そして、この日を境にスバルが作るクルマを見る私の目が変わりました。いや、もっというと戦前から培われてきた日本の工業の底力を知りました。それについて二回にわたって感じたところをお伝えしたいと思います。今回はまず富士重工業が自動車を作るに至った経緯について書きたいと思います。
私が感じているスバルの不思議な魅力を言葉で表すと「独特の走行感覚」です。しかし、その本質はもっと深いところから湧き出ているように感じます。たしかにスバルのハンドルを握ると、他のクルマとの何か「違い」を感じることができます。それではスバルの魅力の源流はどこにあるのでしょう。自動車メーカーをより深く知るには、まずそのバックグランドを理解するべきです。そう考え、私はスバルの航空宇宙事業本部を訪れることにしました。
スバルの前身が中島飛行機という事実はあまり知られていません。自動車メーカーでは、最近ホンダがジェット機を独自に開発しましたが、飛行機と自動車を長い間作ってきたメーカーは世界でもスバルだけです。こうした技術は時代の巡り合わせもあって、不幸にも戦争に利用されたのですが、それでもゼロ戦や戦艦大和を独自技術で開発した私達の大先輩には学ぶべき点がたくさんあると感じました。
航空機から自動車への転換
規模を見ればスバルは小さな自動車メーカーですが、ヨーロッパでもアメリカでも独特の存在感をもっています。それはしっかりとした個性を持ち、独自の技術が評価されているからです。
航空機から自動車への転換
規模を見ればスバルは小さな自動車メーカーですが、ヨーロッパでもアメリカでも独特の存在感をもっています。それはしっかりとした個性を持ち、独自の技術が評価されているからです。
2002年から社長を務めた竹中恭二社長は「スバルのルーツは中島飛行機の時代に遡るかもしれません」と、自動車雑誌(『NAVI』2001年9月号、二玄社)のインタビューで述べました。航空機作りから出発した自動車メーカーは、サーブやBMWなどが有名です。日本では三菱重工と富士重工が航空機メーカーの歴史をもっていましたが、三菱自動車が三菱重工から分離した今、航空機と自動車を作る国内メーカーは、スバルだけといえます。
スバルの前身であった航空機メーカー、中島飛行機は1917年に起業し、終戦の1945年に解散するまで日本最大の企業のひとつでした。中島飛行機は戦争に向かう日本のなかにあって、陸軍戦闘機「隼」や「疾風」、海軍艦上攻撃機「九七式攻撃機」、海軍高速艦上偵察機「彩雲」などいくつもの傑作機を開発しました。また、海軍零式艦上戦闘機(ゼロ戦)に採用された空冷星型14気筒エンジン「栄」、疾風や紫電改、銀河などの軍用機の標準エンジンとなった星形18気筒エンジン「誉」など、航空機エンジンメーカーとしても多
くの実績を残しています。
くの実績を残しています。
戦後、富士重工業と社名を変えて自動車メーカーとして再スタートしましたが、中島飛行機の航空機エンジニアの何名かはそのまま富士重工業に残り、スバルというブランドでクルマを開発することになりました。
本当は中型車を作りたかった
それから13年後の1958年に初の量産型軽自動車となるスバル360が誕生しました。1969年に生産を終えるまで39万台余が販売され、自動車メーカーとしてのスバルの基盤を作るだけでなく、高度成長期という時代の波にのり大成功したといえます。
本当は中型車を作りたかった
それから13年後の1958年に初の量産型軽自動車となるスバル360が誕生しました。1969年に生産を終えるまで39万台余が販売され、自動車メーカーとしてのスバルの基盤を作るだけでなく、高度成長期という時代の波にのり大成功したといえます。
しかし、実は発売こそされなかったのですが、スバルが本当に作りたかったのはスバル1500、コードネーム「P1」と呼ばれる中型車でした。P1の開発は1951年に始まり、百瀬晋六さんがこれに携わりました。百瀬さんはGHQの資料室に通いながら、自動車の設計を学んだ中島飛行機の技師です。
スバル1500は日本初のフルモノコックボディを持ち、フロントサスペンションにはウィッシュボーンにオイルダンパーを組み合わせ、リアはリジットアクスルにリーフスプリングとオイルダンパーを組み合わせました。最初の試作車は1954年2月に完成しました。当時はまだ未舗装の道路が多かったため、耐久性がとても重視されていた時代ですが、乗り心地はとても好評で、ボディやサスペンションの耐久性も他のクルマよりも秀でていたといわれています。
しかし、P1は当時の通産省の許可が得られず、お蔵入りとなりました。日本政府は効率的な戦後復興を考え、普通車はトヨタ自動車に任せ、スバルには国民車構想の軽自動車の開発を担当するように指示したのです。スバル360はP1の技術の流れを汲み、当時としては斬新なモノコック構造を採りました。リアにエンジンと駆動系をまとめることでコンパクトな外寸ながら大きな居住スペースを得ました。これは、フォルクスワーゲン・ビートルを参考にしたといえます。
この合理的なパッケージングにより、それまでの小型車の限界を打ち破り、前述のようにひとつの時代を切り拓きました。小型車の常識を覆せたのは、“飛行機屋”ならではの発想があったからではないでしょうか。
航空機は無駄な重量と空間を嫌います。さらに航空機の開発には法則があるといいます。その法則とは、性能が決まると形が決まる、ということです。つまり徹底的な機能主義です。「フォーム・フォロー・ザ・ファンクション」(形状は機能に従う)という近代建築のテーゼは、航空機にもぴたりとあてはまり、それは自動車にも通じるのです。軽く小さい合理的な国民車。スバル360は多くの人にモータリゼーションのきっかけを与え、親しまれたのでした。
次回は航空宇宙事業本部に取材に行った際の出来事を述べます。
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ジュネーブショーとデトロイトショー、そしてイギリスの不思議
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毎年恒例の自動車ショーといえば1月に開催されるアメリカのデトロイトショーと3月上旬のスイスのジュネーブショーです。大西洋を挟んだこの二つの自動車ショーは共に歴史が長く、20世紀の自動車の発展に大きな影響を与えてきました。
前者は100年前に庶民が買える価格で自動車を大衆化させたヘンリー・フォードの本拠地であり、はじめて自動車の大量生産に成功した地として有名です。ここで生まれた自動車、つまりT型フォードが、アメリカ大陸で飛躍的に普及し馬車から自動車へ扉を開いたのです。
一方のジュネーブショーは自動車メーカーのないスイスというお国柄か、“自動車メーカー”のショーではなく“カーディーラー”のショーとして長い歴史を持っています。しかも世界中から富裕層が集まる地域なので、高級車や高性能車が主役です。ガソリン自動車を考案したドイツメーカーの切磋琢磨もあって、欧州では技術競争が活発化しながら自動車が発展したのです。
つまり大衆化した自動車の祭典であるデトロイトショーと高性能車が主役のジュネーブショーはとても対象的な関係といえます。その対比を考えたときにふと思ったドイツとイギリスの自動車産業の発展と衰退について書いてみたいと思います。
ドイツの機械工業化
デトロイトとジュネーブ二つのショーになぜそのような方向性の違いが生まれたのでしょうか。
20世紀のアメリカは二つの世界大戦で混乱した欧州とは異なり、産業が順調に発展し巨大化しました。その後も長い間、デトロイトから吐き出される大量の自動車は莫大な利益を生み、その資本に裏付けられた工業力がアメリカの大きな柱となっていました。しかし、2010年、GMが破綻したことで新しい産業構造に転換する必要が生じました。
一方のドイツはアメリカのような大衆化よりも技術革新が優先的に行われてきたため、いつの時代も自動車の未来を作る準備をしてきといえます。
そもそも自動車作りがそれぞれの国の工業、産業基盤レベルそのものに依存しているということは見落とされがちな視点です。もっとも、これは自動車だけでなく、航空機や宇宙事業、軍事産業など高度な工業技術が必要と思われる分野にことごとく該当する事実といえるでしょう。
自動車の例でいえば、鋼板を供給する製鉄産業、多彩な種類のゴムや樹脂を供給する化学産業、工作機械、アルミ鋳造産業、電子・電気産業、ガラスなどの基盤が存在しなければ、自動車メーカーにどんなに優れた設計者がいたとしても、優れた自動車を作ることは不可能です。
それでは自動車を生んだ国の機械工業化はどのようにすすんだのでしょうか?ドイツでは、徹底して良質なモノづくりにこだわるマイスター制度が存在していました。クルップ社、テレフンケン社、ダイムラー・ベンツ社、マイバッハ社、ポルシェエンジニアリング社など、それぞれの分野での独創的な技術力が存在していました。しかし、戦前のドイツは個々を見るとトップレベルのものも少なくなかったのですが、それは国内各地に分散しており、国家レベルでの量産体制が不十分でした。これは日本とよく似ています。
その反省を踏まえて、戦後ドイツと日本の工業化の共通点は官民一体の戦略となりました。敗戦から立ち上がるべく良質な自動車を開発し、世界中に販売することで経済を立ち直らせたのです。そして現在のドイツ自動車産業は、つねに技術的なアドバンテージを追求し続け、戦後の高出力、高性能自動車のリーダーとしてのポジションを築いたのです。この一貫した哲学や理念がドイツの自動車産業の真髄といえます。
潜在能力は高いイギリス
これと対称的なのがイギリスです。現在でこそほとんどの自動車ブランドがドイツやインドに吸収されてしまいましたが、戦前のイギリスはさまざまな分野で技術的なアドバンテージを持っていました。航空機におけるロールズ・ロイス・マリーン倒立V型12気筒エンジンは、第二次世界大戦を通しての最高傑作エンジンでしたし、電子技術やジェットエンジンなど、ドイツと同様に先進的な技術を多く持っていたのです。しかし、それらはやはり国内分散型で一
極集中することはなかったのです。
第二次世界大戦直前まで技術分散型だったイギリスですが、ドイツとの戦争が始まろうかという時、国家的危機に直面したと感じたイギリスは、誰も予想できないほどの底力が発揮したのです。信じられないほど短期間で、あの伝説的な戦闘機スピットファイアとマリーン・エンジンを量産できたことは、イギリスの当時の能力の高さを物語っているでしょう。イギリスがもっとも光り輝いていたのは、アメリカ同様に戦後間もない1950~60年代ではないでし
ょうか。この頃、イギリスではおびただしい数の大小メーカーが存在し、それ以上に部品メーカーが多くすそ野の広さを持っていました。
しかし、イギリスは戦勝国となったがために戦後もとのスタイルに戻ってしまったことは皮肉といえます。自動車の基本原理にかかわる技術は、1930年代までに出尽くしたといわれますが、その多くはイギリスにありました。ガソリン自動車を発明したのはドイツですが、トップレベルの技術を持っていたのはむしろイギリスだったといえるかもしれません。しかし戦後になっても生産設備が思うように更新されず、量産化、低価格化に関する技術の面で後れ、これが経営をおびやかしたことがイギリスの自動車産業が衰退した大きな要素と考えられます。
ここで注目したいイギリスの特徴が、先進技術や熟練技術が特定の企業ではなく在野の広い範囲に分散し、それぞれが独自に命脈を保っているという点です。これは日本やドイツと決定的に異なるところといえます。つまり、イギリスでは技術が企業主体ではなく個人のものとして存在していたのです。
大量生産では日独米に後れをとっているものの、イギリスは少量生産が得意です。ほとんどのF1チームがイギリスに本拠を構えていることからもわかります。単品でいいものを安く作る工業風土こそイギリスの特長なのです。
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ジュネーブショーとデトロイトショー、そしてイギリスの不思議
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毎年恒例の自動車ショーといえば1月に開催されるアメリカのデトロイトショーと3月上旬のスイスのジュネーブショーです。大西洋を挟んだこの二つの自動車ショーは共に歴史が長く、20世紀の自動車の発展に大きな影響を与えてきました。
前者は100年前に庶民が買える価格で自動車を大衆化させたヘンリー・フォードの本拠地であり、はじめて自動車の大量生産に成功した地として有名です。ここで生まれた自動車、つまりT型フォードが、アメリカ大陸で飛躍的に普及し馬車から自動車へ扉を開いたのです。
一方のジュネーブショーは自動車メーカーのないスイスというお国柄か、“自動車メーカー”のショーではなく“カーディーラー”のショーとして長い歴史を持っています。しかも世界中から富裕層が集まる地域なので、高級車や高性能車が主役です。ガソリン自動車を考案したドイツメーカーの切磋琢磨もあって、欧州では技術競争が活発化しながら自動車が発展したのです。
つまり大衆化した自動車の祭典であるデトロイトショーと高性能車が主役のジュネーブショーはとても対象的な関係といえます。その対比を考えたときにふと思ったドイツとイギリスの自動車産業の発展と衰退について書いてみたいと思います。
ドイツの機械工業化
デトロイトとジュネーブ二つのショーになぜそのような方向性の違いが生まれたのでしょうか。
20世紀のアメリカは二つの世界大戦で混乱した欧州とは異なり、産業が順調に発展し巨大化しました。その後も長い間、デトロイトから吐き出される大量の自動車は莫大な利益を生み、その資本に裏付けられた工業力がアメリカの大きな柱となっていました。しかし、2010年、GMが破綻したことで新しい産業構造に転換する必要が生じました。
一方のドイツはアメリカのような大衆化よりも技術革新が優先的に行われてきたため、いつの時代も自動車の未来を作る準備をしてきといえます。
そもそも自動車作りがそれぞれの国の工業、産業基盤レベルそのものに依存しているということは見落とされがちな視点です。もっとも、これは自動車だけでなく、航空機や宇宙事業、軍事産業など高度な工業技術が必要と思われる分野にことごとく該当する事実といえるでしょう。
自動車の例でいえば、鋼板を供給する製鉄産業、多彩な種類のゴムや樹脂を供給する化学産業、工作機械、アルミ鋳造産業、電子・電気産業、ガラスなどの基盤が存在しなければ、自動車メーカーにどんなに優れた設計者がいたとしても、優れた自動車を作ることは不可能です。
それでは自動車を生んだ国の機械工業化はどのようにすすんだのでしょうか?ドイツでは、徹底して良質なモノづくりにこだわるマイスター制度が存在していました。クルップ社、テレフンケン社、ダイムラー・ベンツ社、マイバッハ社、ポルシェエンジニアリング社など、それぞれの分野での独創的な技術力が存在していました。しかし、戦前のドイツは個々を見るとトップレベルのものも少なくなかったのですが、それは国内各地に分散しており、国家レベルでの量産体制が不十分でした。これは日本とよく似ています。
その反省を踏まえて、戦後ドイツと日本の工業化の共通点は官民一体の戦略となりました。敗戦から立ち上がるべく良質な自動車を開発し、世界中に販売することで経済を立ち直らせたのです。そして現在のドイツ自動車産業は、つねに技術的なアドバンテージを追求し続け、戦後の高出力、高性能自動車のリーダーとしてのポジションを築いたのです。この一貫した哲学や理念がドイツの自動車産業の真髄といえます。
潜在能力は高いイギリス
これと対称的なのがイギリスです。現在でこそほとんどの自動車ブランドがドイツやインドに吸収されてしまいましたが、戦前のイギリスはさまざまな分野で技術的なアドバンテージを持っていました。航空機におけるロールズ・ロイス・マリーン倒立V型12気筒エンジンは、第二次世界大戦を通しての最高傑作エンジンでしたし、電子技術やジェットエンジンなど、ドイツと同様に先進的な技術を多く持っていたのです。しかし、それらはやはり国内分散型で一
極集中することはなかったのです。
第二次世界大戦直前まで技術分散型だったイギリスですが、ドイツとの戦争が始まろうかという時、国家的危機に直面したと感じたイギリスは、誰も予想できないほどの底力が発揮したのです。信じられないほど短期間で、あの伝説的な戦闘機スピットファイアとマリーン・エンジンを量産できたことは、イギリスの当時の能力の高さを物語っているでしょう。イギリスがもっとも光り輝いていたのは、アメリカ同様に戦後間もない1950~60年代ではないでし
ょうか。この頃、イギリスではおびただしい数の大小メーカーが存在し、それ以上に部品メーカーが多くすそ野の広さを持っていました。
しかし、イギリスは戦勝国となったがために戦後もとのスタイルに戻ってしまったことは皮肉といえます。自動車の基本原理にかかわる技術は、1930年代までに出尽くしたといわれますが、その多くはイギリスにありました。ガソリン自動車を発明したのはドイツですが、トップレベルの技術を持っていたのはむしろイギリスだったといえるかもしれません。しかし戦後になっても生産設備が思うように更新されず、量産化、低価格化に関する技術の面で後れ、これが経営をおびやかしたことがイギリスの自動車産業が衰退した大きな要素と考えられます。
ここで注目したいイギリスの特徴が、先進技術や熟練技術が特定の企業ではなく在野の広い範囲に分散し、それぞれが独自に命脈を保っているという点です。これは日本やドイツと決定的に異なるところといえます。つまり、イギリスでは技術が企業主体ではなく個人のものとして存在していたのです。
大量生産では日独米に後れをとっているものの、イギリスは少量生産が得意です。ほとんどのF1チームがイギリスに本拠を構えていることからもわかります。単品でいいものを安く作る工業風土こそイギリスの特長なのです。
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【DST#019】レクサスCT200h vs アウディA1 1.4TFSI / LEXUS CT 200h vs AUDI A1 1.4TFSI (17分27秒)
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レンジの半額ですよ ランドローバー・フリーランダー2 3.2 l6 HSE / LANDROVER Freelander2 (6分51秒)
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フランスから来たミドシップ P.G.Oスピードスター?U / P.G.O Speedster?U(2分45秒)
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EVで氷上ドライブ テスラ・ロードスター / TESLA Roadster(13分21秒)
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デリカの弟分が登場 三菱デリカD:2 / Mitsubishi Delica D:2
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ついにDSTがDVDで発売開始!!
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2012年3月26日月曜日
【清水和夫メールマガジン】第5号 アーカイブス 2011.2.25
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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年2月25日 第5号
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ShimizuKazuo.com/Startyourengines.jp
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ポルシェのスーパーカー、カレラGT誕生秘話
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ルーブル美術館の発表会
2000年9月、私はパリオートサロンに参加するためコンコルド広場の近くにあるホテルに滞在していました。
当時は世界的なITバブルで高級車が飛ぶように売れ始めた頃でした。「環境」か「エゴ」かの選択を強いられる自動車メーカーは分岐点に立っていたといえます。
ホテルの部屋のベルが鳴りました。コンシェルジュがポルシェからの招待状を届けてくれたのです。「明朝6時にルーブル美術館でお会いしましょう」。カレラGTの発表会の案内でした。ルーブル美術館に早朝6時にプレスを集めるとは大胆な試みだと思いましたが、しばらくして1984年10月のパリサロンで発表されたフェラーリ・テスタロッサがパリの有名なキャバレーで開催されたことを思い出しました。
カレラGTはポルシェにとって959以来の久しぶりのスーパーカーです。「カレラGTは917の生まれかわり」という人がいます。1971年にルマンを完全制覇したポルシェ917は水平対向12気筒を搭載するモンスターマシンでした。水平対向6気筒エンジンを二つ直結して開発された水平対向12気筒は、紛れもなく当時のレースエンジンの常識を覆す秀作でしたが、この時に発表されたカレラGTは917に匹敵する大きなエンジンを搭載していまし
た。68度バンクの5.5リッターV10エンジンをカーボンモノコックの中央に配置するミドシップレイアウトは、カウル付きのF1と呼べました。
しかし、その背景には紆余曲折の末の出産という裏話があったのです。
カレラGTはルマン24時間レースで勝つために開発されました。1990年代後半のルマン24時間レースで活躍したポルシェのレーシングカーといえば911GT1/LM98。水平対向6気筒ツインターボをミドに搭載する本格的なレーシングカーでしたが、レギュレーション変更でその戦闘力が危ぶまれていました。そこでポルシェは次期ルマンカーのベースとなるスーパースポーツカーを開発し、ルマン24時間レースでデビューさせる計画をもっていました。
ところがポルシェの社主であり、当時多大な影響力を持っていたフォルクスワーゲンのピエヒ会長の意向でその計画は白紙に戻されました。ピエヒ会長は、ポルシェ創業者の直系の孫であり、1971年のルマン24時間レースでポルシェ917を優勝に導いたチーム監督だったのに、なぜでしょう? これは当時、フォルクスワーゲングループのアウディとベントレーもまた、ルマン24時間レースに参戦する計画が進められていたため、それらに対してカレラGTはあまりにも強敵となってしまうことを恐れ、ポルシェが辞退したと言われています。
カレラGTはルマン24時間レースにデビューする機会は失われましたが、しかし、ポルシェのヴィーデキング社長は、カレラGTを幻のスーパーカーに終わらせないようにビジネス路線をスイッチしたのです。ヴィーデキング社長は、まもなく生産を開始するカイエンために作られた近代的なライプツイッヒ工場で、カレラGTを生産する構想を打ち立てました。
話を発表会当日に戻しましょう。早朝6時、雨の降る中まだ薄暗いパリの街並みを抜けてルーブル美術館に向かうと、多くのプレスが冷気に包まれた会場に集まっていました。しかし会場はカレラGTへの高まる期待で雨空を吹き飛ばす熱気に溢れていました。私も固唾を呑んで見守る中、アンヴェールされたカレラGTは流麗なプロポーションで、レーシングカーの生まれ変わりとしては、あまりにもエレガントなスタイルを持っていると感じました。
V10エンジンをカーボンモノコックのミドに搭載するカレラGTは、今までにないほど革新的なレーシングカーでした。当時の常識を打ち破るほどのパフォーマンスはサーキットでも、最高のパフォーマンスを発揮してくれそうでした。この時に発表されたV10エンジンは従来のフラット6エンジンより20kgも軽い165kgと発表されました。5.5リッターという排気量はルマンのレギュレーションから決められたものでした。しかし、前述のとおりこのレーサーモデルのカレラGTはルマンで姿を見ることはできませんでした。
ジュネーブでの再会
パリサロンでデビューしたカレラGTはプロトタイプでしたが、2003年のジュネーブショーで本格的な市販モデルとしてふたたび登場しました。外観はパリサロンで登場したプロトタイプとほとんど変わりませんが、ルーフを取り外すことのできるタルガトップが新鮮に写りました。
V10エンジンはボアピッチを2mm拡大した98mmに変更することで、排気量は5.5リッターから5.7リッターに拡大されました。そして量産エンジンとして様々な耐久性を与えたことで、エンジン重量は214kgとなりました。最高出力612ps/8000rpm、最大トルク600Nm/5750rpmはスーパーカーと呼ぶにふさわしい内容でした。
ホイールベースはプロトタイプが911GT1/LM98と同じ2700mmでしたが市販モデルは2730mmとなり全長も大きくなりました。これに関しては「市販モデルなので衝突安全などを考え、フロントのクラッシュ・ボックスを延長した」というのがポルシェの答えでした。ほかにも重量がプロトタイプよりも130kg重い1380kgとなるなど、一般道を走るために様々な変更が施されました。しかしタイヤは左右非対称のユニークなパターンを
持つミシュラン・パイロット・スポーツが採用され、フロントが265/30R19、リヤが335/30R20という当時としては驚異的なサイズが与えられました。さらにホイールはレーシングカーと同じセンターロック方式だったことにも驚きました。
ポルシェはタイヤメーカーにどんな性能を求めたのでしょうか。ミシュランによると、カレラGTの厳しい要求は高速耐久性から始まったといいます。誰がアウトバーンで330km/hで走り続けるかわらないので、400km/hレベルの高速耐久テストは入念に行われたそうです。
ダイナミクスは妥協せずにかつ安全性を高め、しかも乗り心地も重要な課題だったそうです。これらはタイヤメーカーにとって非常に厳しいハードルといえます。しかし、ミシュランはそれを乗り切ったのです。
プロトタイプはエンジンがカーボンモノコックに直接ボルト留めされていましたが、市販モデルは振動を考慮し、サブフレームを介して結合されました。またプロトタイプでは縦置きだったギアボックスは横置きに改められ、カーボン・セラミックで作られる超軽量小径化されたPCCC(ポルシェ・カーボン・コンポジット・クラッチ)により、極めて低い位置に置かれました。
ロードカーとしてのカレラGTの開発コンセプトは低重心を徹底させることでした。低重心はダイナミクスを高めるだけではなく、乗り心地にも効果的なのです。低重心のこだわりは往年の名車917へのリスペクトともいえます。さらに車体はベンチュリー効果を狙った車体床面のアンダーカウルが装着されました。空力特性もカレラGTのもう一つの重要なコンセプトでした。結果としてカレラGTのスタイリングは911GT1とは異なりますが、ボンネット
やテールの処理に市販モデルの911のイメージを抱くことができます。
ニュルブルクリンクで示した実力
私がカレラGTの走る姿を初めて見たのは、ドイツのニュルブルクリンクでした。テストの聖地ともいえるこのコースで、明らかに他のクルマとは異なるエキゾーストサウンドを聞かせてくれました。V8よりもかん高いエンジン音はカレラGTの存在感を示すのに充分な役割を演じていたといえます。
ニュルブルクリンクで耐久テストを行っていたカレラGTのステアリングを握るのはポルシェ社のベテラン・ドライバーでした。レーシングスーツではなく、作業用のつなぎを着たそのドライバーは、与えられたテストメニューをコツコツとこなしていました。耐久テストといっても北コースを8分フラット前後の速いラップタイムで周回を重ねており、そのポテンシャルは他を圧倒していました。
完成したカレラGTの速さは元WRCドライバーとして著名なワルター・ロールのドライブで証明されました。北コースで7分33秒を記録したのです。コーナーリングの最大横Gはバンクのついたカルッセル・コーナーで1.45G。最高速度は緩い上りのストレートで294km/hをマークしました。ライバルのマクラーレン・メルセデスSLRは7分43秒、ポルシェGT2(996モデル)が7分46秒くらいで走っていたことを考えると圧倒的な速さを
理解していただけるでしょう。ドイツの自動車雑誌のテストでも7分40秒を記録しており、ニュルブルクリンクの最速ラップホルダーとなったのです。
(つづく)
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【DST#018】アルファ・ロメオ・ミト・コンペティツィオーネ vs シトロエンDS3スポーツシック / ALFA-ROMEO Mito vs CITROEN DS3 (14分8秒)
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ちょっと懐かしいアメリカン シボレーHHR / CHEVROLET HHR (8分5秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/02/002446.php
2011シーズン直前ピレリF1タイヤテスト / Formula 1 Tire Test by PIRELLI(6分41秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/02/002445.php
EV最新動向、i-MiEV発売から1年を迎えて / MITSUBISHI i-MiEV(13分30秒)
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スタイリッシュなベンツ メルセデス・ベンツ CLS国際試乗会 / MERCEDES-BENZ CLS (9分19秒)
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JNCAP自動車アセスメント試験 歩行者脚部保護性能試験2011 / Japan New Car Assessment Program(3分28秒)
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2000年9月、私はパリオートサロンに参加するためコンコルド広場の近くにあるホテルに滞在していました。
当時は世界的なITバブルで高級車が飛ぶように売れ始めた頃でした。「環境」か「エゴ」かの選択を強いられる自動車メーカーは分岐点に立っていたといえます。
ホテルの部屋のベルが鳴りました。コンシェルジュがポルシェからの招待状を届けてくれたのです。「明朝6時にルーブル美術館でお会いしましょう」。カレラGTの発表会の案内でした。ルーブル美術館に早朝6時にプレスを集めるとは大胆な試みだと思いましたが、しばらくして1984年10月のパリサロンで発表されたフェラーリ・テスタロッサがパリの有名なキャバレーで開催されたことを思い出しました。
カレラGTはポルシェにとって959以来の久しぶりのスーパーカーです。「カレラGTは917の生まれかわり」という人がいます。1971年にルマンを完全制覇したポルシェ917は水平対向12気筒を搭載するモンスターマシンでした。水平対向6気筒エンジンを二つ直結して開発された水平対向12気筒は、紛れもなく当時のレースエンジンの常識を覆す秀作でしたが、この時に発表されたカレラGTは917に匹敵する大きなエンジンを搭載していまし
た。68度バンクの5.5リッターV10エンジンをカーボンモノコックの中央に配置するミドシップレイアウトは、カウル付きのF1と呼べました。
しかし、その背景には紆余曲折の末の出産という裏話があったのです。
カレラGTはルマン24時間レースで勝つために開発されました。1990年代後半のルマン24時間レースで活躍したポルシェのレーシングカーといえば911GT1/LM98。水平対向6気筒ツインターボをミドに搭載する本格的なレーシングカーでしたが、レギュレーション変更でその戦闘力が危ぶまれていました。そこでポルシェは次期ルマンカーのベースとなるスーパースポーツカーを開発し、ルマン24時間レースでデビューさせる計画をもっていました。
ところがポルシェの社主であり、当時多大な影響力を持っていたフォルクスワーゲンのピエヒ会長の意向でその計画は白紙に戻されました。ピエヒ会長は、ポルシェ創業者の直系の孫であり、1971年のルマン24時間レースでポルシェ917を優勝に導いたチーム監督だったのに、なぜでしょう? これは当時、フォルクスワーゲングループのアウディとベントレーもまた、ルマン24時間レースに参戦する計画が進められていたため、それらに対してカレラGTはあまりにも強敵となってしまうことを恐れ、ポルシェが辞退したと言われています。
カレラGTはルマン24時間レースにデビューする機会は失われましたが、しかし、ポルシェのヴィーデキング社長は、カレラGTを幻のスーパーカーに終わらせないようにビジネス路線をスイッチしたのです。ヴィーデキング社長は、まもなく生産を開始するカイエンために作られた近代的なライプツイッヒ工場で、カレラGTを生産する構想を打ち立てました。
話を発表会当日に戻しましょう。早朝6時、雨の降る中まだ薄暗いパリの街並みを抜けてルーブル美術館に向かうと、多くのプレスが冷気に包まれた会場に集まっていました。しかし会場はカレラGTへの高まる期待で雨空を吹き飛ばす熱気に溢れていました。私も固唾を呑んで見守る中、アンヴェールされたカレラGTは流麗なプロポーションで、レーシングカーの生まれ変わりとしては、あまりにもエレガントなスタイルを持っていると感じました。
V10エンジンをカーボンモノコックのミドに搭載するカレラGTは、今までにないほど革新的なレーシングカーでした。当時の常識を打ち破るほどのパフォーマンスはサーキットでも、最高のパフォーマンスを発揮してくれそうでした。この時に発表されたV10エンジンは従来のフラット6エンジンより20kgも軽い165kgと発表されました。5.5リッターという排気量はルマンのレギュレーションから決められたものでした。しかし、前述のとおりこのレーサーモデルのカレラGTはルマンで姿を見ることはできませんでした。
ジュネーブでの再会
パリサロンでデビューしたカレラGTはプロトタイプでしたが、2003年のジュネーブショーで本格的な市販モデルとしてふたたび登場しました。外観はパリサロンで登場したプロトタイプとほとんど変わりませんが、ルーフを取り外すことのできるタルガトップが新鮮に写りました。
V10エンジンはボアピッチを2mm拡大した98mmに変更することで、排気量は5.5リッターから5.7リッターに拡大されました。そして量産エンジンとして様々な耐久性を与えたことで、エンジン重量は214kgとなりました。最高出力612ps/8000rpm、最大トルク600Nm/5750rpmはスーパーカーと呼ぶにふさわしい内容でした。
ホイールベースはプロトタイプが911GT1/LM98と同じ2700mmでしたが市販モデルは2730mmとなり全長も大きくなりました。これに関しては「市販モデルなので衝突安全などを考え、フロントのクラッシュ・ボックスを延長した」というのがポルシェの答えでした。ほかにも重量がプロトタイプよりも130kg重い1380kgとなるなど、一般道を走るために様々な変更が施されました。しかしタイヤは左右非対称のユニークなパターンを
持つミシュラン・パイロット・スポーツが採用され、フロントが265/30R19、リヤが335/30R20という当時としては驚異的なサイズが与えられました。さらにホイールはレーシングカーと同じセンターロック方式だったことにも驚きました。
ポルシェはタイヤメーカーにどんな性能を求めたのでしょうか。ミシュランによると、カレラGTの厳しい要求は高速耐久性から始まったといいます。誰がアウトバーンで330km/hで走り続けるかわらないので、400km/hレベルの高速耐久テストは入念に行われたそうです。
ダイナミクスは妥協せずにかつ安全性を高め、しかも乗り心地も重要な課題だったそうです。これらはタイヤメーカーにとって非常に厳しいハードルといえます。しかし、ミシュランはそれを乗り切ったのです。
プロトタイプはエンジンがカーボンモノコックに直接ボルト留めされていましたが、市販モデルは振動を考慮し、サブフレームを介して結合されました。またプロトタイプでは縦置きだったギアボックスは横置きに改められ、カーボン・セラミックで作られる超軽量小径化されたPCCC(ポルシェ・カーボン・コンポジット・クラッチ)により、極めて低い位置に置かれました。
ロードカーとしてのカレラGTの開発コンセプトは低重心を徹底させることでした。低重心はダイナミクスを高めるだけではなく、乗り心地にも効果的なのです。低重心のこだわりは往年の名車917へのリスペクトともいえます。さらに車体はベンチュリー効果を狙った車体床面のアンダーカウルが装着されました。空力特性もカレラGTのもう一つの重要なコンセプトでした。結果としてカレラGTのスタイリングは911GT1とは異なりますが、ボンネット
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ニュルブルクリンクで示した実力
私がカレラGTの走る姿を初めて見たのは、ドイツのニュルブルクリンクでした。テストの聖地ともいえるこのコースで、明らかに他のクルマとは異なるエキゾーストサウンドを聞かせてくれました。V8よりもかん高いエンジン音はカレラGTの存在感を示すのに充分な役割を演じていたといえます。
ニュルブルクリンクで耐久テストを行っていたカレラGTのステアリングを握るのはポルシェ社のベテラン・ドライバーでした。レーシングスーツではなく、作業用のつなぎを着たそのドライバーは、与えられたテストメニューをコツコツとこなしていました。耐久テストといっても北コースを8分フラット前後の速いラップタイムで周回を重ねており、そのポテンシャルは他を圧倒していました。
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【清水和夫メールマガジン】第4号 アーカイブス 2011.2.10
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2011年2月10日 第4号
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日本こそコンパティビリティ
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1998年10月、日本の軽自動車が再出発しました。日本の国民車構想のもと発展してきた軽自動車の大きさが、衝突安全のため大幅に見直されたのです。海外ではその前年、1997年にメルセデス・ベンツの小型車Aクラスが革新的な安全コンセプトを持って登場しました。そのコンセプトとは前号のメールマガジンでも取り上げましたが「コンパティビリティ」(Compatibility、共生)という概念です。クルマの大きさ(硬さや形状)の違いから生じる衝突安全の格差を解決する画期的なコンセプトでした。
当時、日本では軽自動車の安全性が議論されていました。小型車よりも緩い基準が軽自動車ドライバーの安全性を軽んじていると問題視されたのです。小型車と同じ基準にするべきかどうか、自動車業界で大きな議論となりました。その結果、新しい軽自動車は衝突安全性を小型車と同じ基準にするべく、長さ3.40m、幅1.48m(高さは変わらず2.00m)となり、1990年1月に改定された時の長さ3.30m、幅1.40m(高さ2.00m)と較
べ、ひと回り大きくなりました。これでようやく前面と側面衝突に対応できるボディとなったわけです。ちなみにエンジンの排気量は1990年の規格改定時と変わらず660ccだったので、クルマの重量が増したぶん軽自動車の燃費は小型車よりも悪くなってしまいました。
話はそれましたが、この新規格によって軽自動車の安全性が飛躍的に高まりました。日本の自動車産業の技術水準の高さを用いて、エアバッグやプリテンショナーベルト、ベルトフォースリミッターなどの安全装備が軽自動車にも普及したことで軽自動車のイメージは大きく変わりました。それまで軽自動車のイメージは「安かろう悪かろう」でしたが、安全性が小型車と変わらないことを国が認めたのですから、安心して軽自動車を買う人が増えたのです。実際に
安全性は高まり、多くの人命を交通事故から救うことができました。
しかし、これで軽自動車の安全性が高まったと喜んではいけません。課題は二つありました。
第一に日本の前面衝突安全基準が、試験車全面をコンクリートの壁に50km/hでぶつける「フルラップテスト」しか行っていないことでした。日本はアメリカの法基準を採用したのですが、欧州ではフルラップに代わって前半分のみ衝突させるオフセットテストが法基準として制定されていました。それぞれのテストは目的が違い、オフセットはキャビンの生存空間を評価するテスト法で、フルラップはシートベルトやエアバッグなどの拘束装置を評価するテス
ト法といえます。二つのテストは同じように見えますが、物理学ではまったく異なる特性を求めています。
フルラップでは柔らかいボディのほうが良い成績を得やすいのですが、いっぽうのオフセットは硬いボディが有利です。しかし現実社会の衝突事故を考えるとエンジンルームを柔らかくしてエネルギーを吸収し、キャビンは生存空間を保つために、硬く設計することが求められます。つまり両方のテストが必要なのです。特に軽自動車は自分よりも大きなクルマとぶつかるケースが多いので、キャビンだけではなく車体全体を硬くする必要があるのです。
もう一つの課題は、大きなクルマと小さなクルマの衝突で、どのように乗員の傷害を平等にするのかという課題でした。この課題を前述のコンパティビリティで解決すべきなのです。軽自動車が存在する日本こそ、自動車メーカーにとってチャレンジしがいのある技術課題といえます。
衝突事故では本来大きなクルマが有利ですが、コンパティビリティ・コンセプトを採用することで、小さなクルマのエネルギーを吸収できる柔らかいボディを大きなクルマが持ち、双方の被害を低減できるのです。クルマの大きさ、重さ、形状、硬さの違いをコントロールすれば、小さなクルマを守ることができるのです。大きなクルマがやみくもに安全性を高めるべく、どんどん大きくなると、小さなクルマへの加害性は増すばかりです。衝突テストではフルラップとオフセットの両方を行うことが最低限の条件であり、その上で大きなクルマがコンパティブルでなければ軽自動車に安心して乗ることはできません。
しかし、私がその意味を完全に理解したのはそれから4年後の2002年の7月でした。北陸自動車道路のサービスエリアで休憩していると、そこに軽トラックの事故車が運ばれてきました。フロントの左側が大きく潰れていたのですが、幸い助手席には人は乗っていなかったようです。ドライバーも大けがを避けることができたようです。しかし、潰れた軽トラックを目の前に、私は言葉を失いました。なぜなら自分を守るフレームがほとんど無傷で残っていたか
らです。
相手のクルマは不明ですが、軽トラックは下側のフレームはそのまま形が残り、上屋のキャビンだけが大きく潰れていました。この軽トラックのフレームに相手車のフレームがぶつからないと、エアバッグのセンサーも作動が遅れ、なによりもエネルギー吸収できないまま、キャビンが大きく変形してしまうのです。後に相手のクルマは大型のSUVであったことが判明したのですが、コンパティビリティを追求しなければ、2トン近い重さでバンパーの位置が高く、しかも硬いフレームでできたSUVとぶつかった軽トラックは見るも無惨な結果となるのです。
この時、コンパティビリティ・コンセプトを考案したメルセデス・ベンツの安全担当責任者であるインゴ・カリーナさんにインタビューしたことを思い出しました。カリーナさんはインタビュー冒頭に「メルセデスの安全の三種の神器は、3点式シートベルトとオフセット対応ボディ、そしてコンパティビリティ」と断言したことを今でも鮮明に記憶しています。「どんなに衝突安全の成績が優れていても、実際の事故では実験室のようなわけにはいかない」という
のがカリーナさんの主張であり「ぶつかる相手は様々な大きさ、硬さ、形状をもっており、大きくて、重くて、バンパーの位置が高いSUVとぶつかればメルセデスのSクラスでもリスクは高まるのです」としめました。
Aクラスはメルセデスのなかでもっとも小さなボディなので、いくらAクラスを安全に作っても相手次第ということが気になっていたのです。この小型車を作ったことでメルセデス・ベンツが目覚めたといえるかもしれません。そして軽自動車が多く存在する混在交通を持つ日本こそ「コンパティビリティ的安全思想」はかならず必要であると思ったのです。
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【DST#017】ポルシェ・カイエンS vs ランドローバー・レンジローバースポーツ5.0 V8 / PORSCHE Cayenne S vs LANDROVER Range Rover Sport 5.0 V8(12分46秒)
http://www.startyourengines.jp/dst/2011/02/017.php
ダイムラーの次世代への取り組み ヘルベルト・コーラー博士 / Daimler AG Prof. Dr. Herbert Kohler(9分4秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/01/002417.php
LOVECARS! SUMMIT 2010 @袖ヶ浦フォレストレースウェイ / LOVECARS! SUMMIT 2010 in Sodegaura Forest Raceway(5分57秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/01/002436.php
Wheel Talk! 第18回「急速に拡大しつつあるアジアの自動車市場で日本自動車産業はどうあるべきか?」(66分9秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/01/002438.php
第11回コッパ・デッレ・アウトストリケ体験記 -密着編- / 11a Coppa Delle Auto Storiche 2010(8分28秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/02/002435.php
スバル・フォレスターにもtSが登場! / SUBARU Forester tS(7分55秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/02/002440.php
JNCAP自動車アセスメント試験 歩行者脚部保護性能試験2011 / Japan New Car Assessment Program(3分28秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/02/002441.php
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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年2月10日 第4号
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※このメールはStartyourengines.jpにご登録の会員に送信しています。
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日本こそコンパティビリティ
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1998年10月、日本の軽自動車が再出発しました。日本の国民車構想のもと発展してきた軽自動車の大きさが、衝突安全のため大幅に見直されたのです。海外ではその前年、1997年にメルセデス・ベンツの小型車Aクラスが革新的な安全コンセプトを持って登場しました。そのコンセプトとは前号のメールマガジンでも取り上げましたが「コンパティビリティ」(Compatibility、共生)という概念です。クルマの大きさ(硬さや形状)の違いから生じる衝突安全の格差を解決する画期的なコンセプトでした。
当時、日本では軽自動車の安全性が議論されていました。小型車よりも緩い基準が軽自動車ドライバーの安全性を軽んじていると問題視されたのです。小型車と同じ基準にするべきかどうか、自動車業界で大きな議論となりました。その結果、新しい軽自動車は衝突安全性を小型車と同じ基準にするべく、長さ3.40m、幅1.48m(高さは変わらず2.00m)となり、1990年1月に改定された時の長さ3.30m、幅1.40m(高さ2.00m)と較
べ、ひと回り大きくなりました。これでようやく前面と側面衝突に対応できるボディとなったわけです。ちなみにエンジンの排気量は1990年の規格改定時と変わらず660ccだったので、クルマの重量が増したぶん軽自動車の燃費は小型車よりも悪くなってしまいました。
話はそれましたが、この新規格によって軽自動車の安全性が飛躍的に高まりました。日本の自動車産業の技術水準の高さを用いて、エアバッグやプリテンショナーベルト、ベルトフォースリミッターなどの安全装備が軽自動車にも普及したことで軽自動車のイメージは大きく変わりました。それまで軽自動車のイメージは「安かろう悪かろう」でしたが、安全性が小型車と変わらないことを国が認めたのですから、安心して軽自動車を買う人が増えたのです。実際に
安全性は高まり、多くの人命を交通事故から救うことができました。
しかし、これで軽自動車の安全性が高まったと喜んではいけません。課題は二つありました。
第一に日本の前面衝突安全基準が、試験車全面をコンクリートの壁に50km/hでぶつける「フルラップテスト」しか行っていないことでした。日本はアメリカの法基準を採用したのですが、欧州ではフルラップに代わって前半分のみ衝突させるオフセットテストが法基準として制定されていました。それぞれのテストは目的が違い、オフセットはキャビンの生存空間を評価するテスト法で、フルラップはシートベルトやエアバッグなどの拘束装置を評価するテス
ト法といえます。二つのテストは同じように見えますが、物理学ではまったく異なる特性を求めています。
フルラップでは柔らかいボディのほうが良い成績を得やすいのですが、いっぽうのオフセットは硬いボディが有利です。しかし現実社会の衝突事故を考えるとエンジンルームを柔らかくしてエネルギーを吸収し、キャビンは生存空間を保つために、硬く設計することが求められます。つまり両方のテストが必要なのです。特に軽自動車は自分よりも大きなクルマとぶつかるケースが多いので、キャビンだけではなく車体全体を硬くする必要があるのです。
もう一つの課題は、大きなクルマと小さなクルマの衝突で、どのように乗員の傷害を平等にするのかという課題でした。この課題を前述のコンパティビリティで解決すべきなのです。軽自動車が存在する日本こそ、自動車メーカーにとってチャレンジしがいのある技術課題といえます。
衝突事故では本来大きなクルマが有利ですが、コンパティビリティ・コンセプトを採用することで、小さなクルマのエネルギーを吸収できる柔らかいボディを大きなクルマが持ち、双方の被害を低減できるのです。クルマの大きさ、重さ、形状、硬さの違いをコントロールすれば、小さなクルマを守ることができるのです。大きなクルマがやみくもに安全性を高めるべく、どんどん大きくなると、小さなクルマへの加害性は増すばかりです。衝突テストではフルラップとオフセットの両方を行うことが最低限の条件であり、その上で大きなクルマがコンパティブルでなければ軽自動車に安心して乗ることはできません。
しかし、私がその意味を完全に理解したのはそれから4年後の2002年の7月でした。北陸自動車道路のサービスエリアで休憩していると、そこに軽トラックの事故車が運ばれてきました。フロントの左側が大きく潰れていたのですが、幸い助手席には人は乗っていなかったようです。ドライバーも大けがを避けることができたようです。しかし、潰れた軽トラックを目の前に、私は言葉を失いました。なぜなら自分を守るフレームがほとんど無傷で残っていたか
らです。
相手のクルマは不明ですが、軽トラックは下側のフレームはそのまま形が残り、上屋のキャビンだけが大きく潰れていました。この軽トラックのフレームに相手車のフレームがぶつからないと、エアバッグのセンサーも作動が遅れ、なによりもエネルギー吸収できないまま、キャビンが大きく変形してしまうのです。後に相手のクルマは大型のSUVであったことが判明したのですが、コンパティビリティを追求しなければ、2トン近い重さでバンパーの位置が高く、しかも硬いフレームでできたSUVとぶつかった軽トラックは見るも無惨な結果となるのです。
この時、コンパティビリティ・コンセプトを考案したメルセデス・ベンツの安全担当責任者であるインゴ・カリーナさんにインタビューしたことを思い出しました。カリーナさんはインタビュー冒頭に「メルセデスの安全の三種の神器は、3点式シートベルトとオフセット対応ボディ、そしてコンパティビリティ」と断言したことを今でも鮮明に記憶しています。「どんなに衝突安全の成績が優れていても、実際の事故では実験室のようなわけにはいかない」という
のがカリーナさんの主張であり「ぶつかる相手は様々な大きさ、硬さ、形状をもっており、大きくて、重くて、バンパーの位置が高いSUVとぶつかればメルセデスのSクラスでもリスクは高まるのです」としめました。
Aクラスはメルセデスのなかでもっとも小さなボディなので、いくらAクラスを安全に作っても相手次第ということが気になっていたのです。この小型車を作ったことでメルセデス・ベンツが目覚めたといえるかもしれません。そして軽自動車が多く存在する混在交通を持つ日本こそ「コンパティビリティ的安全思想」はかならず必要であると思ったのです。
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第11回コッパ・デッレ・アウトストリケ体験記 -密着編- / 11a Coppa Delle Auto Storiche 2010(8分28秒)
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スバル・フォレスターにもtSが登場! / SUBARU Forester tS(7分55秒)
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JNCAP自動車アセスメント試験 歩行者脚部保護性能試験2011 / Japan New Car Assessment Program(3分28秒)
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2012年3月10日土曜日
【清水和夫メールマガジン】アーカイブス 2011.1.25
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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年1月25日 第3号
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小は大を兼ねるか?
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コンパティビリティ
小さなクルマの購入を考える時にどうしても頭から離れないのが「万が一ぶつかった時、小さいと危ないかもしれない」という不安です。これは物理の原則なのでどうしようもありません。水は高いところから低いところに流れるが如く、衝突エネルギーは大きいほうから小さいほうに流れます。だから、重く頑丈なクルマが有利なのは当たり前です。小さいクルマの潰れ方がひどいのは、大きなクルマのエネルギーが小さなクルマで吸収された結果なのです。環境に優しい小さなクルマに乗っているほうが、万が一の事故で被害が大きいとは理不尽といえるでしょう。
我が家は昨年スマートを買いました。ESP(ESC=横滑り防止装置)が備わっているので、自損事故(スピンや横転など)の心配はありませんが、大きくて重いクルマにぶつけられた時がちょっと不安です。スマートはエンジンを車体後方に置くことでフロントのクランプルゾーン(Crumple Zone=緩衝)を増やし、前面衝突の乗員保護性能を小型車レベルに高めた秀作ですが、後方からの衝突には弱いかもしれません。ですから、いつも交差点で
止まるときは、前のクルマとの距離を少し空けておいて、バックミラーを見ながら後続車が二台くらい止まる素振りを見せるまで逃げる場所を作っておきます。スマートに乗ってからそんな習慣が身につきました。
ところで皆さんは自動車の安全に関連した「コンパティビリティ」(Compatibility)という言葉を聞いたことがありますか? 1990年代、日本で自動車の衝突安全がようやく法令化されましたが、自動車安全がライフテーマであった私は、日本メーカーの取材だけでは満足できずに、海外メーカーも積極的に取材しました。その時、聞き慣れない新しい安全コンセプトをメルセデス・ベンツで安全技術を担当するインゴ・カリーナさんから聞いた
のです。それが「共生」という意味をもつ「コンパティビリティ」という言葉でした。ぶつかってもお互いにサバイバルするという理想的なコンセプトですが、実現するには非常に難しいクルマ作りが要求されます。
当時、世界の自動車メーカーが一堂に集まって、安全を議論するESV国際会議(Enhanced Safety of Vehicles、自動車安全技術国際会議)で、アメリカは側面衝突、欧州はオフセット衝突をテーマにして研究することが決まっていました。日本は歩行者事故が多いので、歩行者保護がテーマでした。ちょうどその時、メルセデス・ベンツはW210(Eクラス)とスマートを衝突させた「コンパティビリティ」のデモを公開したのです。
「コンパティビリティ」とはクルマの大きさ、重さ、形状、硬さにかかわらず、衝突被害を分担するという高度な自動車設計コンセプトだったのです。
メルセデス・ベンツは全長3m以下のスマートと、全長3.6mのFF小型車Aクラスを1997年頃に市販化しましたが、この二つの小型車を世に出すにあたり、W210のEクラスから「コンパティビリティ」コンセプトで車体を設計したのです。メルセデス・ベンツの安全性を小型車でも実現するには、どうしても「コンパティビリティ」が必要だったのです。
1990年代を思い出しながら「コンパティビリティ」についてさらに考えてみましょう。90年代は安全基準で先行していたアメリカに続いて日本と欧州でも法制化が実施されました。さらにアメリカで制度化していたNCAP(New Car Assessment Programme、新車アセスメントプログラム)や保険協会が独自に行っているIIHS(Insurance Institute for Highway Safety)という新車の安全情報公開が各国の法制化に深く影響しつつありました。
情報公開はユーザーが安全なクルマを選ぶ目安になるし、メーカー(自動車や部品メーカー)も安全技術を開発する促進剤になるといえます。その結果、新型車は年々安全性が向上し、バリアへの衝突テストの成績は急速に高まっていきました。
しかし、ここに衝突安全の「死角」があったのです。各国で行われているテストはフルラップにしろ、オフセットにしろ、バリアに向かってぶつかった時の衝撃や変形を評価しています。このようなテスト評価が進みすぎるとリアルワールドとの整合性が合わなくなると指摘する専門家もいました。前述のインゴ・カリーナさんもその一人でした。
バリアにぶつかるということは、物理学では自分と同じ大きさ、重さ、硬さのクルマと正面衝突することを模擬しています。しかし、現実の事故では同じクルマ同士でぶつかるケースは少ないのです。
衝突安全はエアバッグやシートベルトなどの拘束装置の性能評価、またオフセット衝突でもキャビンの生存空間を評価することができますが、すべて同じクルマ同士の衝突なのです。実際の事故ではかならずクルマの大小がありますから、小さなクルマが大きな被害を被る悲劇を避けて通ることはできないのです。
実際に事故分析を綿密に行うと、クルマの大きさが異なる(厳密には重量、形状、剛性の違い)クルマ同士の事故の方が、乗員の死亡率が高いということが明らかになったのです。日本では大型トラックと軽自動車が混在する地域での死亡事故が多いというデータもありました。
それまで小さなクルマはぶつかったときに被害が大きいのは、やむを得ないと諦めていました。ですから、お金があれば大きくて丈夫な(安全な)クルマに乗りたいという意識は普通の感覚だったでしょう。
この問題を見事に解決してくれる唯一の策が「コンパティビリティ」なのです。それでは小さなクルマはどのようにしてサバイバルするのでしょうか。えは意外に簡単で「小さなクルマほど頑丈なボディが必要で、クランプルゾーンの確保が不可欠」ということでした。また、大きなクルマも小さなクルマを考えて、フロント部分を柔らかく設計し、面で荷重を受ける形状が望ましいとされました。
このように現実の事故実態から目をそむけずに個々のクルマを設計することが重要です。バリア衝突テストの成績を目指した開発では、間違った方向に技術が進んでしまうかもしれません。次回は日本の軽自動車の安全性を考えながらコンパティビリティについて再考したいと思います。
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【DST#015】日産フーガ・ハイブリッド vs ホンダ・レジェンド・アドバンスパッケージ / NISSAN Fuga Hybrid vs HONDA Legend Advance Package(17分47秒)
http://www.startyourengines.jp/dst/2011/01/dst015_vs_nissan_fuga_hybrid_v.php
【DST#016】プジョーRCZ(AT) vs プジョーRCZ(MT) / PEUGEOT RCZ Integral Leather Pack(AT) vs PEUGEOT RCZ Carbon Roof Integral Leather Pack(MT)(14分2秒)
http://www.startyourengines.jp/dst/2011/01/rcz.php
旧車再生の道 ロッキーオート取材 / Rocky Auto(5分53秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/01/002414.php
Start Your Enginesからのお年玉プレゼント! / Present from Start Your Engines(2分4秒)
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メルセデス・ベンツBクラスの乗り心地を検証する / MERCEDES-BENZ B180(10分5秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/01/002416.php
新世代トラックの乗り味は? 三菱ふそう・キャンター試乗会 / MITSUBISHI FUSO Canter(7分17秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/01/002415.php
交通事故ゼロを目指して「ゼロクラッシュ・ジャパン」シンポジウム2010 基調講演 / Zero Crash Japan 2010 Symposium 1(25分57秒)
http://www.startyourengines.jp/video/2011/01/002433.php
交通事故ゼロを目指して「ゼロクラッシュ・ジャパン」シンポジウム2010 パネルディスカション / Zero Crash Japan 2010 Symposium 2(44分13秒)
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我が家は昨年スマートを買いました。ESP(ESC=横滑り防止装置)が備わっているので、自損事故(スピンや横転など)の心配はありませんが、大きくて重いクルマにぶつけられた時がちょっと不安です。スマートはエンジンを車体後方に置くことでフロントのクランプルゾーン(Crumple Zone=緩衝)を増やし、前面衝突の乗員保護性能を小型車レベルに高めた秀作ですが、後方からの衝突には弱いかもしれません。ですから、いつも交差点で
止まるときは、前のクルマとの距離を少し空けておいて、バックミラーを見ながら後続車が二台くらい止まる素振りを見せるまで逃げる場所を作っておきます。スマートに乗ってからそんな習慣が身につきました。
ところで皆さんは自動車の安全に関連した「コンパティビリティ」(Compatibility)という言葉を聞いたことがありますか? 1990年代、日本で自動車の衝突安全がようやく法令化されましたが、自動車安全がライフテーマであった私は、日本メーカーの取材だけでは満足できずに、海外メーカーも積極的に取材しました。その時、聞き慣れない新しい安全コンセプトをメルセデス・ベンツで安全技術を担当するインゴ・カリーナさんから聞いた
のです。それが「共生」という意味をもつ「コンパティビリティ」という言葉でした。ぶつかってもお互いにサバイバルするという理想的なコンセプトですが、実現するには非常に難しいクルマ作りが要求されます。
当時、世界の自動車メーカーが一堂に集まって、安全を議論するESV国際会議(Enhanced Safety of Vehicles、自動車安全技術国際会議)で、アメリカは側面衝突、欧州はオフセット衝突をテーマにして研究することが決まっていました。日本は歩行者事故が多いので、歩行者保護がテーマでした。ちょうどその時、メルセデス・ベンツはW210(Eクラス)とスマートを衝突させた「コンパティビリティ」のデモを公開したのです。
「コンパティビリティ」とはクルマの大きさ、重さ、形状、硬さにかかわらず、衝突被害を分担するという高度な自動車設計コンセプトだったのです。
メルセデス・ベンツは全長3m以下のスマートと、全長3.6mのFF小型車Aクラスを1997年頃に市販化しましたが、この二つの小型車を世に出すにあたり、W210のEクラスから「コンパティビリティ」コンセプトで車体を設計したのです。メルセデス・ベンツの安全性を小型車でも実現するには、どうしても「コンパティビリティ」が必要だったのです。
1990年代を思い出しながら「コンパティビリティ」についてさらに考えてみましょう。90年代は安全基準で先行していたアメリカに続いて日本と欧州でも法制化が実施されました。さらにアメリカで制度化していたNCAP(New Car Assessment Programme、新車アセスメントプログラム)や保険協会が独自に行っているIIHS(Insurance Institute for Highway Safety)という新車の安全情報公開が各国の法制化に深く影響しつつありました。
情報公開はユーザーが安全なクルマを選ぶ目安になるし、メーカー(自動車や部品メーカー)も安全技術を開発する促進剤になるといえます。その結果、新型車は年々安全性が向上し、バリアへの衝突テストの成績は急速に高まっていきました。
しかし、ここに衝突安全の「死角」があったのです。各国で行われているテストはフルラップにしろ、オフセットにしろ、バリアに向かってぶつかった時の衝撃や変形を評価しています。このようなテスト評価が進みすぎるとリアルワールドとの整合性が合わなくなると指摘する専門家もいました。前述のインゴ・カリーナさんもその一人でした。
バリアにぶつかるということは、物理学では自分と同じ大きさ、重さ、硬さのクルマと正面衝突することを模擬しています。しかし、現実の事故では同じクルマ同士でぶつかるケースは少ないのです。
衝突安全はエアバッグやシートベルトなどの拘束装置の性能評価、またオフセット衝突でもキャビンの生存空間を評価することができますが、すべて同じクルマ同士の衝突なのです。実際の事故ではかならずクルマの大小がありますから、小さなクルマが大きな被害を被る悲劇を避けて通ることはできないのです。
実際に事故分析を綿密に行うと、クルマの大きさが異なる(厳密には重量、形状、剛性の違い)クルマ同士の事故の方が、乗員の死亡率が高いということが明らかになったのです。日本では大型トラックと軽自動車が混在する地域での死亡事故が多いというデータもありました。
それまで小さなクルマはぶつかったときに被害が大きいのは、やむを得ないと諦めていました。ですから、お金があれば大きくて丈夫な(安全な)クルマに乗りたいという意識は普通の感覚だったでしょう。
この問題を見事に解決してくれる唯一の策が「コンパティビリティ」なのです。それでは小さなクルマはどのようにしてサバイバルするのでしょうか。えは意外に簡単で「小さなクルマほど頑丈なボディが必要で、クランプルゾーンの確保が不可欠」ということでした。また、大きなクルマも小さなクルマを考えて、フロント部分を柔らかく設計し、面で荷重を受ける形状が望ましいとされました。
このように現実の事故実態から目をそむけずに個々のクルマを設計することが重要です。バリア衝突テストの成績を目指した開発では、間違った方向に技術が進んでしまうかもしれません。次回は日本の軽自動車の安全性を考えながらコンパティビリティについて再考したいと思います。
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