2012年6月26日火曜日

【清水和夫メールマガジン】第11号 アーカイブス 2011.5.25

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年5月25日 第11号
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原発事故に見る欧米と日本の安全思想の違い

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 以前、メルマガで自動車産業のサプライチェーンについて書きました。その後、地震と津波で被災した多くの部品メーカーの影響は収まるどころか、ますます世界の生産工場への影響が拡大しています。この件で、幾つかの自動車メーカーの幹部と話しましたが、三次サプライヤー以下の部品メーカーの被害実態は想定外だったそうです。

 自動車の場合、下請けメーカーの中には世界シェアが70%以上もある「オンリーワン技術」を持った企業があります。自動車産業の構造がピラミッド化しているのは水面より上のサプライヤーですが、水面下では一つの企業に集中する部品もあるわけです。つまり、以前このメルマガでも書いたように、ピラミッドではなく菱形のような構造といえます。

 北茨城で塗料に混ぜるマイカを生産している塗料会社は、世界中ほとんどの自動車メーカーと取引しています。パールホワイトに混ぜる原料としてマイカが必要なのですが、その塗料会社が被災し、影響を受けたあるメーカーはパールホワイトが生産できず、商品のラインナップからその色をはずさざるを得ない状況に追い込まれました。カタログを刷り直すなど、影響は小さくありません。また、ゴムパッキンやオイルシールを生産しているあるメーカーは、原料(石油)が入手できずに供給が止まったままです。

 このように日本の自動車産業は裾野が広く、日本でないと作れない部品が多いことがわかりました。とはいえ、それに甘んじることは許されません。阪神淡路大震災の時に神戸港が被災しましたが、復興までの2年間で韓国の釜山港に物流量が多く移ってしまいました。復興に遅れると日本の自動車産業の底辺が根こそぎ海外に行ってしまうかもしれません。虎視眈々と狙っている国はたくさんあるのです。

 そこで重要なのは震災復興の要となる電力です。しかし、東京電力の原子力発電所事故によって、電力供給量が低下し、産業界に大きな影響を与えることが懸念されています。その裏側には原子力発電の重要性を主張したいという、さまざまな思惑があるようにも思えますが、はたして産業界への電力供給か原発のリスクか、国民は大きな関心を持って見守っていかなくてはなりません。

 地震と原発事故はいつの時代も人々を恐怖に陥れます。しかし、なんとなくその問題を風化させてきた我々の社会は、今回の津波では取り返しのつかない事態を起こしてしまいました。「想定外」の災害という言葉が、関係者や多くの専門家の口から聞こえてきた時、私は、まっさきに自動車安全で学んでいた「欧米と日本の安全思想の違い」を思い出しました。

 福島第一原子力発電所の被害は想像を絶する事態に発展しています。放射能汚染という未曾有の事態が今も進行中なのです。この原稿を書いている段階でも原発がのっぴきならない状態になってしまっています。

 1300万人が住む大都市東京。昼間は近県からもっと多くの人間が通勤して来る日本の首都です。その首都は電気がないと電車もエレベーターも水も使えません。しかも追い打ちをかけるように電力会社はこれまで国民に「オール電化」を推進してきました。その裏側には電気エネルギーの需要を高め、さらなる原子力推進を目論んでいたのです。しかも、原子力で発電した夜間の過剰電力を売る狙いで三菱自動車と富士重工業を巻き込み、電気自動車(EV)の促進を進めてきたのです。日本のEVブームの背後には原子力発電を黙認するシナリオがあったのです。

 日本と欧米の安全思想の違いは、今回のケースだけでなく、昨年起きたトヨタのリコール問題や過去の自動車安全にも通じるといえます。参考になる文献として明治大学理工学部の向殿(むかいどの)政男教授の論文があります。論文には精神論や責任論が先行しやすい日本では、事故が起きた時の対応が遅れることがしばしば見られると書かれています。国民をパニックにしてはならないという大儀のために、最悪の事態は最悪の事態が起きた後で発表されるのです。

 リコール問題でも日本の制度ではメーカーの判断で発表できません。許認可権を持つ国にしっかりと説明し、その対策案が決まってからリコールを発令し、行政への報告がユーザーよりも先行するという矛盾が生じるのです。欧米では被害拡大を防止することが最優先となるため、ユーザーあるいは国民への情報開示が迅速に行われるのです。

 自然災害の後に起きた政府や東電の対応のまずさは、人災と言えるでしょう。長い間、大本営発表に慣れてきた我々は、メディアもユーザーも安全思想に大きな過ちがあります。これは私の過去30年にわたる取材活動で得た一つの結論なのです。

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新しいEVのスタンダードになれるか?日産リーフ / NISSAN Leaf (16分59秒)
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スズキ歴史館を訪ねて(前篇) / SUZUKI PLAZA (13分45秒)
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ゼロクラッシュジャパン「通過交通を考える」闇坂編 / Zero Crash Japan(11分56秒)
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フランスにも7シーターワゴンはある プジョー308SWプレミアム / PEUGEOT 308SW (6分51秒)
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ダイナミック・セイフティ・テスト・シーズン2ハイライトシーン / Dynamic Safety Test Season2
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2012年6月11日月曜日

【清水和夫メールマガジン】第10号 アーカイブス 2011.5.10

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年5月10日 第10号
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電気自動車時代のエネルギー問題

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 3月11日に大地震が発生し、地震による被害だけではなく、それに伴う津波によって大災害となったのは周知のとおりです。さらに、この大災害には東京電力の福島第一原子力発電所の危機も含まれています。今回は昨年発表された日産のEV、リーフと日本の今後のエネルギーの問題について考えてみたいと思います。

 日産がリーフを横浜の本社で発表した時、そのボディの大きさと左ハンドルに違和感を覚えました。日本におけるEVは、三菱やスバルが東京電力と協力して国内向けにスタートしたのですが、日産はフランスのルノーの後押しもあって、グローバルでEVを普及させることを念頭においていたのです。

 EV旋風が吹き荒れる日本では、カルロス・ゴーンCEOが年間6000台の販売をコミットしたことも話題となりました。台数を明言したのは、神奈川県などの地方行政もその補助金予算を確保する必要があるからです。比較的安価な種類のリチウムイオンを使うリーフですが、利益を出すにはたくさんの台数を売る必要があるのです。その意味では補助金は必要といえます。

 リーフの価格は300万円ですが、質感と5年以上乗った場合の燃料代を考慮すれば高くないかもしれません。時代の最先端を行くクルマに乗る優越感の代金だと考えるべきでしょう。販売を急ぎすぎる日産のEV戦略には賛同できませんが、クルマは相当に出来が良いです。全長4455mm、全幅1770mm、全高1550mmと立派なサイズですが、全世界で販売するには最低限の大きさです。背が高いボディフォルムはキャビンの広さを連想させます。全体的にボリューム感があるスタイリングをもっていますが、フロントノーズの先端には充電用の口が付いていてEVであることを主張しています。

 軽自動車ベースで仕立てられた三菱i-MiEVとは異なり、リーフはEV専用車として開発したことが大きな特徴です。EVというと重量やコスト、後続距離が課題となるので、どうしても小さなボディで開発したくなります。しかし、日産はあえてその常識に囚われていません。むしろ都市部のユーザーを考えて、デイリーの走行距離などから検討した結果のボディサイズなのでしょう。もちろん、このリーフの後にはルノーが開発した二人乗りのスモールEVも市販化が計画されています。

 電気エネルギーとEVは密接な関係にありますが、これからEVはどうなるのでしょうか? 日産リーフを試乗した翌日に地震が発生したのは偶然だったのでしょうか? いろいろ考えさせられました。

 その試乗で感じたことは、まず内装が驚くほど「質感が高い」ということです。300万円に相応しいレベルに仕上がっています。EVなのでエンジンのスターターはありませんが、起動ボタンを押すと数秒後に走行準備が整ったことが表示されます。万が一、充電器が差し込まれていると安全のために走行はできないようになっているのです。

 インパネで気になるのはアメリカで話題のスポーツEVのテスラや前述のi-MiEVと同じく、残りの走行距離を知らせるメーターがわかりやすいかどうかです。エネルギー密度が低いバッテリーでは航続距離の判断はとても重要なのです。この表示はモード燃費で計算した値と、過去数十分前まで走行していた実際の電力消費率の二つの数字が表示されます。

 基本的には後者が実電費なので短く表示されますが、長い下り坂を走った場合などは、実電費で計算される航続距離は長くなるので、上り坂を走ると大きな計算違いをすることになります。しかし、たとえば昨年試乗したアウディQ5ハイブリッドではカーナビの標高差を計算し、もっと正確な走行可能距離を表示します。カーナビ先進国の日本なのに、こういったことに対応していないのは残念と言えます。

 走行感覚はとても気持ちよいものを持っています。静かで力強い加速はEVプレミアム。他のEVで見られるモーターの回転数が高まったときの高い周波数の音も抑えられています。モーターのトルクは280Nmで、3リッターV6エンジン並のトルクに匹敵します。さらに電流が流れた瞬間に最大トルクを発生するモーターは、エンジンとは異なるトルク特性を持っています。電動パワーステアリングも自然な手応えを示し、乗り心地も快適です。サスペンションのストローク感も悪くありません。つまりリーフ自体はたいへんよく仕上が
ったいいクルマなのです。

 問題は日本のEV戦略です。もともとEV戦略は夜間電力(原子力発電)を無駄なく使いたいという施策の一環として計画されました。しかし、本来はそんな企業の都合ではなく、ユーザーの利便性をもっと考慮したEV戦略を打ち立てるべきなのです。補助金と急速充電器のインフラ整備でEVのユーザーを釣ろうとしても、そう甘くはありません。「もっとじっくりといきましょうよ、日産さん」と言ってあげたいものです。

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【DST#022】アバルト・プント・エボ vs ルノー・メガーヌRS / ABARTH Punto Evo vs RENAULT Megane RS(17分37秒)
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ComingSoon【世界のモーターショー】オート上海2011リポート2 / Auto Shanghai 2011 Part.2(8分31秒)
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韓国製SUVサンヨン・コランド / SSANGYONG Korando(6分40秒)
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もはや欧州車の域か? キアK5 / KIA K5(7分14秒)
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ヒュンダイの最高傑作、ジェネシスの最新モデルを試す / HYUNDAI Genesis(8分56秒)
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EV界の本命か? シティコミューター、スマートEVの実力 / SMART Fortwo Electric Drive (14分38秒)
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2012年5月25日金曜日

【清水和夫メールマガジン】第9号 アーカイブス 2011.4.25

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年4月25日 第9号
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大震災でわかった日本の自動車産業の存在感

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 2011年3月11日に発生した地震で多くの方が被災しました。現在も福島原子力発電所では放射能汚染問題が生じるなど、その被害はさらに広がりつつあります。被災した方々にはあらためてお見舞い申し上げます。

 さて、今回の大震災では日本が大きな危機に直面しただけでなく、世界の自動車産業にも想像以上に影響がありました。皮肉にも震災が起きたことで、日本が世界の自動車産業に影響力を持っていたのか明らかになったのです。今回は日本の震災被害がどのように世界の自動車産業に影響するのか考えてみました。

 日本の自動車製造業は、2000年頃から九州と東北に生産拠点を徐々にシフトしていきました。特に最新工場は東北地方に集中しています。たとえば、トヨタ・ヤリス(欧州向けヴィッツ)を生産するセントラル自動車は宮城県黒川郡に新本社工場を移転しました。そして、それに伴い多くの部品メーカーが東北地方に進出しました。

 栃木県は多くの自動車メーカーが存在し、テストコース銀座とも呼ばれています。栃木県は地震の影響が少ないという理由で自動車メーカーや大手部品メーカーが拠点を設置したのです。本田技術研究所も栃木県に拠点を構えるメーカーのひとつです。今回の震災で不幸にも一人の職員が亡くなっただけでなく、設計部門の建物が大きな被害を受けました。他にも多くの自動車産業が今回の震災で被害を受けたのです。

 当初、その被害の程度は誰も想像できないものでした。地震被害の情報が次々と日本メーカーの本社に報告されましたが、それは序章に過ぎませんでした。海外工場の影響が時間差で明らかになったのです。日本の自動車メーカーが国内の工場のライン確保に躍起になっていたところ、アメリカの工場が稼働できなくなると一報を受けたのです。部品メーカーが止まることは国内だけでなく世界中のメーカーの工場も止まることを意味したのです。

 被害は日本の自動車メーカーだけでなくGMボルトの工場ラインも東北地方の部品メーカーから部品が届かないため止まりました。アメリカで調達している部品の一部は日本から供給されていたのです。円高・関税対策のために現地化率100%と言われていましたが、モジュール化するユニットのコアの部分は日本が握っていたのです。

 さらに欧州ではプジョー・シトロエンの工場のラインも止まりました。ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる浮遊粒子を除去するDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)のコア部品が東北で生産されていたのです。

 ホンダはブラジルのオートバイ工場が稼働できなくなりました。ホンダの二輪事業の場合、その多くの部品はマザー工場のタイから供給されていましたが、コア部品は日本からタイに送られ、モジュールとして世界の生産拠点に供給されていたのです。たった一つの部品がないだけで、すべてのラインが止まってしまいました。

 考えてみれば当たり前のことです。何万点という部品が一つ欠けても動かなくなる自動車は大型精密部品の集積のような商品なのです。


日本だけの問題ではない

 今回の出来事でわかったのは、海外での100%部品調達による生産といっても、実はコア技術を司る部品はあくまで日本製だということです。いままで自動車産業は自動車メーカーを頂点としたピラミッド構造と言われていましたが、実際の産業構造は三角形ではなく菱形だったのです。自動車メーカーのすぐ下に存在するのが一次サプライヤー、別名Tier1(第一の階層)と呼ばれます。その下にTier2、Tier3となりますが、下に行くほど裾野が広がっているのではなく、次第に専門性を持った数少ない中小企業に行きつく
わけです。

 このように先進国向けのクルマには大小の差こそあれ、日本製の部品が必要だったのです。ですから円高や自動車不況で生きていけないと嘆く中小企業の経営者は、他にできないオンリーワンの技術を持つことがとても重要な企業戦略となるわけです。誰でも作れるモノなら必ず価格競争になります。

 しかし、こうした理屈は部品だけの話ではありません。日本の製造業全体に共通した話です。世界中で開催される自動車ショーには世界中から自動車メディアが取材に訪れ、その数は天文学的数字です。しかし、世界中のメディアが手にしているデジタル一眼レフは、キヤノンとニコンだけと言ってもいいくらいです。

 今回被災した部品メーカーには自動車の電子制御の心臓部分を生産する電子部品も少なくなかったと思いますが、日本は電子制御のハイテクではなく、むしろ機械の精密さで世界をリードしているのではないでしょうか。

 オンリーワンの技術が豊富な日本の自動車産業が復興しないと、世界の自動車メーカーにまで大きな打撃を与えてしまいます。いまや世界の自動車産業はあたかも有機的な神経系統のように世界中に張りめぐらされ、米粒のような部品から数十kgの重さの鋼鉄ブロックまで、世界中で生産・供給しているのです。

チームジャパン復活のために

 思えば日本車は2000年以降、冬の時代を過ごしていました。それは世界進出や台数といった数字の上では日本の自動車産業は急成長したのですが、その一方でモノ作りがおろそかにされた時期だったことを意味します。

 例えばトヨタは世界中に工場を作り、コストと効率を旗印に突進していました。その結果、たしかに世界一の生産台数となりましたが、クルマ作りの本質的な技術革新では遅れをとりました。そして、たまった垢が吹き出たかのように、多くのリコール車を生みだしたのです。国土交通省のデータでも2008年度は5万km以内で発生する不具合件数は全体の40%にものぼり、設計の甘さが指摘されました。「コストと効率」を徹底的に追求した結果、クルマとしての魅力や先進性が失われてしまったのです。

 しかし、その一方で部品メーカーは欧米の自動車メーカーにも供給し、欧米の先進的で魅力的なクルマを支えていました。「日本の部品がなくては自動車は作れない」と欧州メーカーに言わせるほどの影響力を持つようになったのです。

 このことは自動車産業の主役が、完成車メーカーから専門性を持ったサプライヤーに移行したことを物語っています。1980年代までの自動車は「走る・止まる・曲がる」という基本性能で勝負してきました。しかし、90年代には衝突安全が注目されエアバッグやシートベルトなどの拘束装置が普及しました。こうした安全装備が急速に発展したのは、専門性の高いサプライヤーの存在が重要でした。2000年代に入って、予防安全やITS(カーナビ)などの技術やシステムもますます重要度を増してきました。

 そして近年ではハイブリッドやEVなどの電子制御と電気駆動開発が、いっそう専門性の高いサプライヤーの必要性を求めています。最新のハイブリッドカーの中身を見ると、電気エネルギー技術、内燃機関、機械工学、空気力学(流体)、熱力学、音響技術、通信技術など多岐にわたります。

 自動車開発が従来のように完成車メーカー主体という概念ではなく、専門性の高い部品をいかにパッケージするのかというシステム構築技術主体という概念に変化しなければなりません。自動車メーカーはいかに専門性を持ったサプライヤーの力を引き出すのか、ここにチームジャパン復活のカギが隠されているように思います。

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【DST#021】アウディA8 4.2FSIクワトロ vs レクサスLS600hLバージョンUZ / AUDI A8 4.2 FSI quattro vs LEXUS LS600hL (17分20秒)
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Wheel Talk! 第20回「東日本大震災が私たちに突きつけた新たなる課題について考える」(58分40秒)
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交通事故ゼロを目指して「ゼロクラッシュ・ジャパン」シンポジウム2011 / Zero Crash Japan 2011 Symposium (51分55秒)
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ヒュンダイの最高傑作、ジェネシスの最新モデルを試す / HYUNDAI Genesis(8分56秒)
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【世界のモーターショー】ソウルモーターショー2011リポート2 / Seoul Motor Show 2011 Part.2(8分2秒)
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【世界のモーターショー】ソウルモーターショー2011リポート1 / Seoul Motor Show 2011 Part.1(7分18秒)
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内燃機関でハイブリッドを超えられるか? BMWの実力/BMW528i(10分46秒)
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ダイナミック・セイフティ・テスト・シーズン2 DVD好評発売中!! <収録内容>ベンツE350ブルーテック vs BMW535i /ゴルフTSIvs CR-Z/ジャガーXJ vs パナメーラ4Sなど
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2012年5月23日水曜日

2012年5月10日木曜日

【清水和夫メールマガジン】第8号 アーカイブス 2011.4.10

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スバルに見る航空機と自動車の相似(後篇)

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前回に続いて富士重工業航空宇宙事業本部の取材について書きたいと思います。

「飛行機が美しいのは無駄がないからです」と熱く語ってくれたのは、富士重工業航空宇宙事業本部宇都宮製作所の星恒憲所長(当時)です。「無駄のないレイアウトがスバル車のコアかもしれない」という竹中恭二社長(当時)の言葉を思い出しました。そのこととクルマがドライバーに操縦の喜びを与えてくれることには、関連があるのではないでしょうか。このあたりの“秘密”を私は知りたいと考えました。

宇都宮製作所はどこか静寂感が漂う工場です。ここには2600人もの人間が働いているのですが、多くのロボットが作業する近代的な設備の工場とは趣を異にします。じっくり観察すると、むしろ職人が黙々とモノ作りに励む、工房という印象でした。

星所長は「航空機産業は先進的なデジタル技術で設計しておりますが、モノ作りの現場は、かなり手作りの感覚です」と語ってくれました。この事業所では防衛庁の航空機のメンテナンスや部品の設計と並行して、ボーイング社の機体の一部を生産していましたが、依然として職人の技が必要なのです。航空機産業にこそ日本人の「器用さ、丁寧さ」が役立つと感じた瞬間でした。

ジャンボ機に活かされる織物の技術

たとえば、ハイテク機ボーイング777にもこだわりと、それを支える職人の存在が認められます。最も驚いたのは777のメインギア(着陸装置)の格納ドアの製作現場でした。航空機にとって軽量化と耐疲労強度を高めることは非常に重要だといいます。設計の現場ではグラム単位で軽量化を考え、場所によってはミクロ単位の精度が要求されます。例えば、777のメインギア格納ドアは、最新技術であるカーボンの複合材で作られていました。カーボンはF1のモノコックボディとしても採用される軽量な素材です。ここでは一枚一枚
のカーボン繊維を幾重にもレイアップ(張り合わせ)され、日本人が昔から得意としている織物の技術が活かされているのです。まるで特注の着物を織る職人のような手さばきで作業が進む光景に私は驚愕しました。わずかな埃が混入しても品質に影響するので、密閉された作業場は大気圧よりも少し高めの気圧が維持されているのです。

ボーイング777の主翼部分には300トンの機体が2Gを受けた荷重、600トンもの力がかかるといいます。複合素材(カーボン)を用いたものとしては当時でも世界最大級のもので、4.6×2.6mほどの大きさがありました。重量はわずかに一枚300kg。主翼は飛行機の構成部品の中でも特に技術力が必要とされる箇所ですが、スバルは主翼メーカーと言われるほど実績をもっています。

カーボンの複合材がレイアップされると、次にオートクレーブ(加圧高温釜)で時間をかけて灼かれることになります。この際重要なのは温度を上げる時も下げる時も均一に温度管理をすることだそうです。航空機技術と自動車技術を較べると、航空機生産には手作り感覚が色濃く残るのに対し、クルマ作りは大量生産技術を推し進めているということです。

曲がるために必要なパワー

そこから導き出されるクルマ作りと飛行機作りの結びつきとはなんでしょうか?

私は取材中、中川良一さんとお会いした時のことを思い出しました。中川さんは中島飛行機の技師でした。ゼロ戦のエンジン開発に携わり、「1000馬力級のエンジンを作ること」に青春のすべてを捧げたかたで、後にプリンス自動車に入り、グロリア、スカイラインなどを開発しました。中川さんの職場仲間だった百瀬晋六さんはスバルに残り、長谷川龍雄さんはトヨタに、そして中村良夫さんはホンダでクルマを作ることになりました。
中川さんの言葉でもっとも印象に残ったのは「航空機の世界には“馬力二乗の法則”というものがあり、エンジン出力を2倍にするなら、機体は4倍の性能を必要とする」とおっしゃったことです。
航空機においてはエンジンのパワーは非常に重要な意味を持っています。高度の上げ下げだけでなく、旋回時には失速するためエンジンパワーが必要です。敵機を追いかけたり逃げる時には、急旋回の性能が必要です。この性能を決めるのは機体とエンジンだといいます。戦闘機の命をかけた空中戦が繰り広げられる時、総合的な運動性能が勝ち負けを決します。激しい運動に耐えうる機体性能が必要なのです。この法則は、そのままクルマにもあてはまりそうです。たとえば高いパフォーマンスを持つスポーツカーほど、「馬力二乗の法則」は重要な意味をもつでしょう。
つまり航空機メーカーであったスバルに脈々と流れる馬力二乗の法則は、現代のスバル車にも受け継がれています。前述の徹底した合理主義と馬力二乗の二つの法則がスバルの源流ともいえる思想なのです。
取材の最後に、航空部門と航空宇宙部門の技術的交流はあるのか、と星さんに尋ねてみました。星さんは「東京都三鷹市の技術研究所で技術部長会議を行い、互いに技術をフィードバックしています」と胸を張って答えました。さらに「航空分野を持つ自動車メーカーと持たない自動車メーカーに差があると思いますか?」という次の質問にも、「もちろんです」と力強く答えました。「航空機は100%予防安全ですから」。航空機のパーツで驚かされたのは、タバコの箱ほどの小さなパーツにも検品をした人間の名前が記される厳格さです。
私はスバルの「何か」がわかったような気がしました。

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【DST#021】アウディA8 4.2FSIクワトロ vs レクサスLS600hLバージョンUZ / AUDI A8 4.2 FSI quattro vs LEXUS LS600hL (17分20秒)
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内燃機関でハイブリッドを超えられるか? BMWの実力/BMW528i(10分46秒)
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かわいくて爽快 フィアット500C 1.2 POP / FIAT 500C (7分8秒)
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【世界のモーターショー】ジュネーブショー2011リポート4 / 81e Salon de L'Auto Geneve 2011 4(6分18秒)
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【世界のモーターショー】ジュネーブショー2011リポート3 / 81e Salon de L'Auto Geneve 2011 3(6分50秒)
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グローバリズムが進む世界に打って出る新しいグローバルカー / MITSUBISHI Concept Global Small (11分11秒)
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2012年4月26日木曜日

【清水和夫メールマガジン】第7号 アーカイブス 2011.3.25

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~

2011年3月25日 第7号
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スバルに見る航空機と自動車の相似
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2002年の春、私は富士重工業の航空宇宙事業本部を訪問しました。そして、この日を境にスバルが作るクルマを見る私の目が変わりました。いや、もっというと戦前から培われてきた日本の工業の底力を知りました。それについて二回にわたって感じたところをお伝えしたいと思います。今回はまず富士重工業が自動車を作るに至った経緯について書きたいと思います。

私が感じているスバルの不思議な魅力を言葉で表すと「独特の走行感覚」です。しかし、その本質はもっと深いところから湧き出ているように感じます。たしかにスバルのハンドルを握ると、他のクルマとの何か「違い」を感じることができます。それではスバルの魅力の源流はどこにあるのでしょう。自動車メーカーをより深く知るには、まずそのバックグランドを理解するべきです。そう考え、私はスバルの航空宇宙事業本部を訪れることにしました。
スバルの前身が中島飛行機という事実はあまり知られていません。自動車メーカーでは、最近ホンダがジェット機を独自に開発しましたが、飛行機と自動車を長い間作ってきたメーカーは世界でもスバルだけです。こうした技術は時代の巡り合わせもあって、不幸にも戦争に利用されたのですが、それでもゼロ戦や戦艦大和を独自技術で開発した私達の大先輩には学ぶべき点がたくさんあると感じました。

航空機から自動車への転換

規模を見ればスバルは小さな自動車メーカーですが、ヨーロッパでもアメリカでも独特の存在感をもっています。それはしっかりとした個性を持ち、独自の技術が評価されているからです。
2002年から社長を務めた竹中恭二社長は「スバルのルーツは中島飛行機の時代に遡るかもしれません」と、自動車雑誌(『NAVI』2001年9月号、二玄社)のインタビューで述べました。航空機作りから出発した自動車メーカーは、サーブやBMWなどが有名です。日本では三菱重工と富士重工が航空機メーカーの歴史をもっていましたが、三菱自動車が三菱重工から分離した今、航空機と自動車を作る国内メーカーは、スバルだけといえます。
スバルの前身であった航空機メーカー、中島飛行機は1917年に起業し、終戦の1945年に解散するまで日本最大の企業のひとつでした。中島飛行機は戦争に向かう日本のなかにあって、陸軍戦闘機「隼」や「疾風」、海軍艦上攻撃機「九七式攻撃機」、海軍高速艦上偵察機「彩雲」などいくつもの傑作機を開発しました。また、海軍零式艦上戦闘機(ゼロ戦)に採用された空冷星型14気筒エンジン「栄」、疾風や紫電改、銀河などの軍用機の標準エンジンとなった星形18気筒エンジン「誉」など、航空機エンジンメーカーとしても多
くの実績を残しています。
戦後、富士重工業と社名を変えて自動車メーカーとして再スタートしましたが、中島飛行機の航空機エンジニアの何名かはそのまま富士重工業に残り、スバルというブランドでクルマを開発することになりました。

本当は中型車を作りたかった

それから13年後の1958年に初の量産型軽自動車となるスバル360が誕生しました。1969年に生産を終えるまで39万台余が販売され、自動車メーカーとしてのスバルの基盤を作るだけでなく、高度成長期という時代の波にのり大成功したといえます。
しかし、実は発売こそされなかったのですが、スバルが本当に作りたかったのはスバル1500、コードネーム「P1」と呼ばれる中型車でした。P1の開発は1951年に始まり、百瀬晋六さんがこれに携わりました。百瀬さんはGHQの資料室に通いながら、自動車の設計を学んだ中島飛行機の技師です。
スバル1500は日本初のフルモノコックボディを持ち、フロントサスペンションにはウィッシュボーンにオイルダンパーを組み合わせ、リアはリジットアクスルにリーフスプリングとオイルダンパーを組み合わせました。最初の試作車は1954年2月に完成しました。当時はまだ未舗装の道路が多かったため、耐久性がとても重視されていた時代ですが、乗り心地はとても好評で、ボディやサスペンションの耐久性も他のクルマよりも秀でていたといわれています。
しかし、P1は当時の通産省の許可が得られず、お蔵入りとなりました。日本政府は効率的な戦後復興を考え、普通車はトヨタ自動車に任せ、スバルには国民車構想の軽自動車の開発を担当するように指示したのです。スバル360はP1の技術の流れを汲み、当時としては斬新なモノコック構造を採りました。リアにエンジンと駆動系をまとめることでコンパクトな外寸ながら大きな居住スペースを得ました。これは、フォルクスワーゲン・ビートルを参考にしたといえます。
この合理的なパッケージングにより、それまでの小型車の限界を打ち破り、前述のようにひとつの時代を切り拓きました。小型車の常識を覆せたのは、“飛行機屋”ならではの発想があったからではないでしょうか。
航空機は無駄な重量と空間を嫌います。さらに航空機の開発には法則があるといいます。その法則とは、性能が決まると形が決まる、ということです。つまり徹底的な機能主義です。「フォーム・フォロー・ザ・ファンクション」(形状は機能に従う)という近代建築のテーゼは、航空機にもぴたりとあてはまり、それは自動車にも通じるのです。軽く小さい合理的な国民車。スバル360は多くの人にモータリゼーションのきっかけを与え、親しまれたのでした。
次回は航空宇宙事業本部に取材に行った際の出来事を述べます。

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2012年4月10日火曜日

【清水和夫メールマガジン】第6号 アーカイブス 2011.3.10

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清水和夫メールマガジン~自動車大航海時代~
2011年3月10日 第6号
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ジュネーブショーとデトロイトショー、そしてイギリスの不思議

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毎年恒例の自動車ショーといえば1月に開催されるアメリカのデトロイトショーと3月上旬のスイスのジュネーブショーです。大西洋を挟んだこの二つの自動車ショーは共に歴史が長く、20世紀の自動車の発展に大きな影響を与えてきました。

前者は100年前に庶民が買える価格で自動車を大衆化させたヘンリー・フォードの本拠地であり、はじめて自動車の大量生産に成功した地として有名です。ここで生まれた自動車、つまりT型フォードが、アメリカ大陸で飛躍的に普及し馬車から自動車へ扉を開いたのです。

一方のジュネーブショーは自動車メーカーのないスイスというお国柄か、“自動車メーカー”のショーではなく“カーディーラー”のショーとして長い歴史を持っています。しかも世界中から富裕層が集まる地域なので、高級車や高性能車が主役です。ガソリン自動車を考案したドイツメーカーの切磋琢磨もあって、欧州では技術競争が活発化しながら自動車が発展したのです。

つまり大衆化した自動車の祭典であるデトロイトショーと高性能車が主役のジュネーブショーはとても対象的な関係といえます。その対比を考えたときにふと思ったドイツとイギリスの自動車産業の発展と衰退について書いてみたいと思います。

ドイツの機械工業化

デトロイトとジュネーブ二つのショーになぜそのような方向性の違いが生まれたのでしょうか。
20世紀のアメリカは二つの世界大戦で混乱した欧州とは異なり、産業が順調に発展し巨大化しました。その後も長い間、デトロイトから吐き出される大量の自動車は莫大な利益を生み、その資本に裏付けられた工業力がアメリカの大きな柱となっていました。しかし、2010年、GMが破綻したことで新しい産業構造に転換する必要が生じました。
一方のドイツはアメリカのような大衆化よりも技術革新が優先的に行われてきたため、いつの時代も自動車の未来を作る準備をしてきといえます。


そもそも自動車作りがそれぞれの国の工業、産業基盤レベルそのものに依存しているということは見落とされがちな視点です。もっとも、これは自動車だけでなく、航空機や宇宙事業、軍事産業など高度な工業技術が必要と思われる分野にことごとく該当する事実といえるでしょう。
自動車の例でいえば、鋼板を供給する製鉄産業、多彩な種類のゴムや樹脂を供給する化学産業、工作機械、アルミ鋳造産業、電子・電気産業、ガラスなどの基盤が存在しなければ、自動車メーカーにどんなに優れた設計者がいたとしても、優れた自動車を作ることは不可能です。

それでは自動車を生んだ国の機械工業化はどのようにすすんだのでしょうか?ドイツでは、徹底して良質なモノづくりにこだわるマイスター制度が存在していました。クルップ社、テレフンケン社、ダイムラー・ベンツ社、マイバッハ社、ポルシェエンジニアリング社など、それぞれの分野での独創的な技術力が存在していました。しかし、戦前のドイツは個々を見るとトップレベルのものも少なくなかったのですが、それは国内各地に分散しており、国家レベルでの量産体制が不十分でした。これは日本とよく似ています。

その反省を踏まえて、戦後ドイツと日本の工業化の共通点は官民一体の戦略となりました。敗戦から立ち上がるべく良質な自動車を開発し、世界中に販売することで経済を立ち直らせたのです。そして現在のドイツ自動車産業は、つねに技術的なアドバンテージを追求し続け、戦後の高出力、高性能自動車のリーダーとしてのポジションを築いたのです。この一貫した哲学や理念がドイツの自動車産業の真髄といえます。

潜在能力は高いイギリス

これと対称的なのがイギリスです。現在でこそほとんどの自動車ブランドがドイツやインドに吸収されてしまいましたが、戦前のイギリスはさまざまな分野で技術的なアドバンテージを持っていました。航空機におけるロールズ・ロイス・マリーン倒立V型12気筒エンジンは、第二次世界大戦を通しての最高傑作エンジンでしたし、電子技術やジェットエンジンなど、ドイツと同様に先進的な技術を多く持っていたのです。しかし、それらはやはり国内分散型で一
極集中することはなかったのです。

第二次世界大戦直前まで技術分散型だったイギリスですが、ドイツとの戦争が始まろうかという時、国家的危機に直面したと感じたイギリスは、誰も予想できないほどの底力が発揮したのです。信じられないほど短期間で、あの伝説的な戦闘機スピットファイアとマリーン・エンジンを量産できたことは、イギリスの当時の能力の高さを物語っているでしょう。イギリスがもっとも光り輝いていたのは、アメリカ同様に戦後間もない1950~60年代ではないでし
ょうか。この頃、イギリスではおびただしい数の大小メーカーが存在し、それ以上に部品メーカーが多くすそ野の広さを持っていました。

しかし、イギリスは戦勝国となったがために戦後もとのスタイルに戻ってしまったことは皮肉といえます。自動車の基本原理にかかわる技術は、1930年代までに出尽くしたといわれますが、その多くはイギリスにありました。ガソリン自動車を発明したのはドイツですが、トップレベルの技術を持っていたのはむしろイギリスだったといえるかもしれません。しかし戦後になっても生産設備が思うように更新されず、量産化、低価格化に関する技術の面で後れ、これが経営をおびやかしたことがイギリスの自動車産業が衰退した大きな要素と考えられます。


ここで注目したいイギリスの特徴が、先進技術や熟練技術が特定の企業ではなく在野の広い範囲に分散し、それぞれが独自に命脈を保っているという点です。これは日本やドイツと決定的に異なるところといえます。つまり、イギリスでは技術が企業主体ではなく個人のものとして存在していたのです。

大量生産では日独米に後れをとっているものの、イギリスは少量生産が得意です。ほとんどのF1チームがイギリスに本拠を構えていることからもわかります。単品でいいものを安く作る工業風土こそイギリスの特長なのです。

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